デビュー2年目で早くもトップチームであるレッドブル・レーシングのシートを手にしたピエール・ガスリーが、その目覚ましいキャリアの進展やまもなく開幕する2019シーズンの抱負などについて語った。その着信はピエール・ガスリーがずっと待ち望んでいたものだったはずだが、彼は1度ならず2度も逃してしまっていた。
2018年8月、ダニエル・リカルドがレッドブル・レーシングを離脱し、ルノーに移籍するという衝撃的なニュースが公になったあと、ピエール・ガスリーはスマートフォンに水は天敵という事実を痛感していた。「スマートフォンが壊れていたから、数日間持っていなかったんだ」と、ピエール・ガスリーはカタルーニャ・サーキット内のレッドブル・レーシングホスピタリティエリアで打ち明ける。「3、4日、電話を受けられない状態だったから、ヘルムート・マルコ(レッドブル・モータースポーツアドバイザー)にメールして僕の親友の電話番号を伝えておいた。それで、ヘルムートのオフィスからその友人に2回の不在着信があったんだ。それから2時間後、ようやくヘルムートと連絡がついたんだ」「ヘルムートは僕がレッドブル・レーシングのドライバーに決定したと伝えてくれた。とても特別な瞬間だったよ」「親友たちはカートからジュニアフォーミュラまでずっと僕をフォローしてくれていたから、レッドブル・レーシングへの昇格がどれほど重大なのかを知っていた。だから、ヘルムートから連絡を受けて、彼らと一緒に喜べたのは最高だった」ピエール・ガスリーは今でこそ笑って話すが、過去数年間の彼の歩みを考えれば、トップチームへの昇格がすんなり実現しなかったとしても別に驚くことではなかっただろう。現在23歳のピエール・ガスリーはまだ26戦に出走しただけで、また、そこまでの目指す道のりは長く曲がりくねったものだった。2016シーズンにGP2(現在のFIA F2)タイトルを獲得したピエール・ガスリーだったが、2017シーズン開幕時には彼が収まるF1シートの空きがなく、代わりに日本のスーパーフォーミュラを戦うことになった。ところが、2017年9月、今度はトロロッソに招集され、ダニール・クビアトに代わってマレーシアGPを走ることになった(なお、クビアトは2019シーズンからトロロッソへ復帰している)。そして、ピエール・ガスリーはそのまま同シーズン終盤6戦中5戦に出走。日程が重なったスーパーフォーミュラ最終戦鈴鹿とアメリカGPでは、タイトル獲得の可能性が残っていた鈴鹿を優先した(結局、鈴鹿の最終戦は台風接近でキャンセルになった)。その後、ピエール・ガスリーはトロロッソに籍を置き、2018シーズンのF1を戦うことになるのが、ここから目覚ましい活躍を見せていく。2018シーズン第2戦バーレーン決勝4位入賞でキャリア初ポイントを獲得してF1ファンを驚かせたピエール・ガスリーは、その後も2度ポイントを重ね、リカルドの抜けたレッドブル・レーシングのシートに収まる最有力候補に躍り出た。このような彼のキャリアは「ジェットコースターのようだった」では片付けられない。「ここ15カ月はかなりクレイジーだったよ。日本でスーパーフォーミュラを戦っていたのに、後半はテストなしでいきなりトロロッソからF1デビューするチャンスを得たんだからね」「しかも、トロロッソでの最初のシーズンを戦っていた最中にレッドブル・レーシングへの昇格が決定した。正直に言って、自分のことを振り返る時間なんて1秒もなかった。たまに少し立ち止まって、自分に何が起きているのかを認識するのは良いことなのにさ。かなりエキサイティングな15カ月間だった」ピエール・ガスリーは、ポイント獲得だけでも殊勲と見なされるトロロッソから、過去に4回のワールドタイトルとGP59勝を築いてきたレッドブル・レーシングへ移籍した。この移籍は、ピエール・ガスリーへの期待を高めると同時に周囲からの目を厳しくした。2019年プレシーズンテスト初日、ピエール・ガスリーは1分19秒814という堂々のタイムを記録した。これは、経験豊富なチームメイトのマックス・フェルスタッペンが前日に記録したタイムからわずか0.3秒遅れただけだった。しかし、この日のセッションが残り1時間となった時点で、ピエール・ガスリーはRB15のコントロールを失い、バリアにクラッシュした。自分のミスだったとただちに認めたピエール・ガスリーは、トップチームでドライブするチャンスを得たことで、大局ではなく細部に集中できるようになったと語る。「自分にプレッシャーをかけるより、(細部に集中する方が)エキサイティングだ。すごくプロフェッショナルで、多くの知見が集まった環境にいる。誰もがあらゆる事態への対処法を知っている」「だから、僕も自分の仕事に集中できている。100%の準備をして、マシンに乗ったらベストパフォーマンスを発揮できるようにしているんだ」「同時に、F1フル参戦はまだ2シーズン目だし、経験が足りないから、今後数年で自分が進歩していくことも分かっている。レースを重ねるにつれて成長していくと思うけれど、競争力を高めるためになるべく早く学びたい。2019シーズンが終わる頃には、今の倍のF1経験を重ねることになる」