2025年F1メキシコGPの終盤、レース残り2周で導入されたバーチャル・セーフティカー(VSC)について、FIA(国際自動車連盟)が公式声明を発表し、その理由を説明した。レースはランド・ノリス(マクラーレン)が独走優勝を飾ったが、70周目にカルロス・サインツ(ウィリアムズ)がスタジアムセクションでスピンし、マシンを大きく損傷。その結果としてVSCが発動され、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)やオスカー・ピアストリ(マクラーレン)らが終盤に前車へ仕掛けるチャンスを失った。
VSC導入の経緯とFIAの説明70周目、サインツはターン14の外側でスピンし、ランオフエリアでマシンが停止。ウィリアムズFW47は露出した位置に留まり、さらに煙を上げ始めたため、レースコントロールは火災の可能性を検知。これによりマーシャルの現場介入が必要と判断された。FIAは声明の中で次のように説明している。「サインツはターン14外側のランオフエリアでスピンし、マシンが露出した位置で停止した。車両が煙を上げ始め、レースコントロールには火災の通知も入った。このためマーシャルによる回収作業が必要と判断された。マーシャルがコースサイドに出る場合、標準手順としてレースは中立化される。本件ではVSCが発動され、車両が安全な位置に移動されるまで継続された。安全が確保された時点でVSCは終了し、レースはグリーンフラッグ下でフィニッシュした」レースはVSC終了後、残り半周ほどで再開された。FIAが強調した安全管理と感謝FIAは声明の最後で、現地オーガナイザーおよびマーシャルへの感謝も述べている。「我々は現地のASNであるOMDAI、オートドロモ・エルマノス・ロドリゲス、そしてボランティアとして活動するマーシャルたちに敬意と感謝を表する。彼らの専門性と献身は、我々のスポーツの安全かつ円滑な運営に欠かせないものである」なお、FIAは同時に、序盤でリアム・ローソン(レーシングブルズ)の前をマーシャルが横切った件についても、別途説明を行っている。分析:安全最優先のFIA判断、だがタイミングに議論も今回のVSC導入は、結果的にフェルスタッペンとピアストリの追撃を阻止し、順位変動の可能性を消す形となった。特に70周目という終盤での介入だったため、一部では「レースへの影響が大きすぎた」との意見も上がった。しかし、FIAの説明通りマーシャルが現場に入る必要があった以上、安全確保を最優先した判断は妥当といえる。露出したマシンが煙を上げていた状況では、ドライバーやマーシャル双方に危険が及ぶ可能性があり、即時のVSC発動は手順として正しい。F1では近年、マーシャル出動時の安全プロトコルが厳格化されており、今回の対応もその一環とみられる。レース結果に影響が出たとはいえ、安全面の徹底が最優先というFIAの姿勢が改めて示された形だ。