ジョージ・ラッセルのF1ハンガリーGPでのスタート失敗について、メルセデスが当初の見解を修正した。レース直後には2026年型パワーユニット特有の「トップ・オブ・ザ・パック(Top of the Pack)」現象が原因と考えられていたが、その後の詳細な解析により、実際にはグリッド上での回転数制御(レブコントロール)の異常だったことが判明した。このトラブルによりラッセルはスタートでアンチストールが作動し、大きく出遅れた。それでも最後尾近くから追い上げて7位まで挽回したが、タイトル争いでは再び痛いポイントロスとなった。
「トップ・オブ・ザ・パック」説が浮上した理由レース直後、ラッセルはマシンがスロットル操作に反応しなかったと説明していた。「アクセルを踏んで回転数を維持していたんだけど、スタートの約4秒前に突然エンジン回転が勝手に上下し始めたんだ」「僕はスロットルを調整して対応しようとしていたけど、まったく反応しなかった。エンジンがスロットル入力に応答していなかった」チーム代表のトト・ヴォルフも当初は異常な挙動を認めていた。「約10%のスロットル開度で突然エンジン回転が最大まで上がり、その後アクセルを戻すと今度は失速した。こうしたミスがあまりにも多いことには本当に満足していない」これらの症状から、チーム内では2026年型パワーユニット特有の「トップ・オブ・ザ・パック」現象が発生した可能性が疑われた。クールダウンルームで映像を見たアンドレア・キミ・アントネッリも、当初は同じ見解を示していた。「トップ・オブ・ザ・パック」とは何か「トップ・オブ・ザ・パック」は、2026年F1マシンの複雑なスタート手順で発生する可能性がある現象だ。ドライバーはスタート前に数秒間エンジンを高回転で維持し、排気エネルギーを蓄えてターボを立ち上げる必要がある。これは発進直後、時速50kmまではMGU-Kによる電力アシストが使用できないため、その間の加速性能を確保する狙いがある。しかし、この間にバッテリーが満充電状態、いわゆる「トップ・オブ・ザ・パック」になると、MGU-Kがエンジンへ負荷をかけられなくなる。その結果、ターボが十分に立ち上がらず、エンジン回転だけが急上昇し、燃料流量やスロットル開度が制限されて正常なスタートができなくなることがある。マクラーレンのパフォーマンス担当テクニカルディレクター、マーク・テンプルは以前、この仕組みについて次のように説明していた。「ターボはエンジンに負荷がかかっている方がうまく立ち上がる。停止状態で空ぶかししても十分な負荷は得られない」「MGU-Kはエンジンに負荷を与えながらバッテリーを充電できるが、バッテリーが満充電になるとその負荷をかけられなくなり、ターボも十分に立ち上がらなくなる」実際の原因は回転数制御の異常しかし、メルセデスがレース後に実施した詳細なデータ解析により、「トップ・オブ・ザ・パック」説は否定された。実際には、グリッド上でエンジン回転数を一定に保つレブコントロール機能に異常が発生し、回転数が大きく変動していたことが原因だった。ラッセルはその変動を抑えようとスロットル操作を繰り返していたが、不運にもスタートシグナルが消えた瞬間のスロットル開度は約10%しかなかった。そのため十分な駆動力を得られず、アンチストールが作動してしまった。また、今回の問題にはハンガロリンク特有の長いスタートシーケンスも影響した可能性がある。ハンガリーGPでは青色ライト点灯から赤シグナル消灯まで約13秒を要し、前戦ベルギーGPの約10秒より長かった。ラッセルは、チーム全体で原因究明を進めていると語った。「もちろん問題は起きているけど、チーム全員が同じように悔しがっている。僕と同じくらい腹を立てているよ」「自分たちに原因がないのか、こうしたミスにつながる要素がないのかを徹底的に見直さなければならない」「こんなシーズンは僕のキャリアで経験したことがない。F1だけでなく、レース人生全体を通じても初めてだ」今回の解析により、メルセデスはラッセルのスタート失敗が当初疑われた「トップ・オブ・ザ・パック」現象ではなく、回転数制御システムの異常によるものだったと結論づけた。2026年の新レギュレーション下ではスタート手順が極めて複雑化しており、わずかな制御の乱れがレース全体を左右することを改めて浮き彫りにした。
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