メルセデスF1が今季相次いで発生したリタイアの原因を特定した。ジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリを襲った痛恨のDNFは、いずれもパワーユニットのバッテリーシステムに起因する問題だったことが明らかになった。カナダGPでは首位を走行していたラッセルがリタイアを喫し、前戦バルセロナ・カタルーニャGPでは2番手を走行していたアントネッリも同様に戦列を離脱した。タイトル争いを続けるメルセデスにとって、大量ポイントを失う大きな痛手となっていた。
チームのテクニカルディレクターを務めるジェームズ・アリソンは、チーム公式ポッドキャスト『Nu Silver Arrows Radio Show』で、問題の原因を突き止めたことを明かした。共通する原因はバッテリーシステムメルセデスは今季、ワークスチームだけでなくカスタマーチームでも複数の信頼性トラブルに見舞われている。しかしアリソンによれば、それらはすべてバッテリーの同じ領域に起因しているという。「熱心にF1を見ている人なら、今季ここまでメルセデス製パワーユニットを搭載した数台が同様の問題で止まっていることに気付いているだろう」「すべてがまったく同じ故障ではないが、広い意味ではバッテリーの同じ部分から発生している」アリソンはリスクの大半を把握しており、改良版コンポーネントの投入を進めていると説明した。「リスクのある領域の大部分は理解できていると思う」「僕たちが『モジュール』と呼んでいるバッテリーの新しい仕様をシーズン中に段階的に投入できれば、メルセデス勢全体の状況は改善するはずだ」「もちろん僕たちにとって非常に重要なことだ。こうしたDNFは本当に痛い」この問題はメルセデスだけではなく、カスタマーチームであるマクラーレンでも今季たびたび発生している電気系統トラブルとの関連が指摘されている。なぜテストを重ねても故障は起きるのかF1チームは膨大なシミュレーションとベンチテストを行っているが、それでもレース環境で初めて露呈する弱点は存在するとアリソンは説明する。「故障は起こり得るものだと受け入れなければならない」「その故障がテストやベンチ上で発生し、チャンピオンシップポイントを争う実戦で起きないよう最大限努力している」「だが現実には常にうまくいくわけではない。マシンがリタイアしたなら、それは僕たちのプロセスが失敗したということだ」アリソンによれば、問題が発覚した直後は原因が完全に判明していなくても、まずは機器への負荷を下げる保守的な運用を行うという。「こうした故障が起きた場合、原因が完全に解明される前の段階では、チームは少し慎重な方向へ戻る傾向がある」「問題を抱えている機器に余裕を持たせるため、少し負荷を下げて運用するんだ」その一方で、別のエンジニアリングチームが根本原因を解析し、再発しない設計へ改良を進める。「まずは脆弱な部分に楽をさせる応急処置を行う。その後で本当の治療法を開発する」「原因を突き止め、設計から問題を取り除き、十分な耐久性を持つ解決策を実現するんだ」オーストリアGP以降が試金石メルセデスは問題の原因を把握し、対策の方向性も明確になったとしている。しかし改良型バッテリーモジュールが実戦で十分な信頼性を示すまでは慎重な運用が続く見通しだ。次の5週間で4レースが予定されており、まずはオーストリアGPから過密日程が始まる。コンストラクターズ選手権とドライバーズ選手権の両方を争うメルセデスにとって、速さだけでなく信頼性の回復が今後の最大の課題となりそうだ。