中国GP後、メルセデスのフロントウイングに関する挙動がパドックの注目を集めた。映像ではストレートからコーナー進入時にかけて、ウイングが一度中間状態を経てから完全に立ち上がる“多段階的な動き”が確認され、レギュレーション違反の可能性も指摘された。特に問題視されたのは、アクティブエアロの遷移時間に関する規定だ。
フロントおよびリアウイングは「2つの固定状態の間を0.4秒以内で移行する」ことが求められているが、メルセデスの挙動はそれを超えているように見えたため、ライバルチームの一部はFIAに問い合わせを行う事態となった。原因は“トリック”ではなく単純な計算ミスしかし結論として、この挙動に意図的な設計やグレーゾーンの活用はなかった。原因はメルセデス側の計算ミスだった。メルセデスのフロントウイングは、油圧によってコーナーモードへ押し上げる仕組みを採用している。しかし上海では、高速走行時にウイングへかかる空気抵抗に対して必要な油圧を過小評価していた。その結果、コーナーモードに切り替えても、速度が高い状態では空力負荷に押し返され、ウイングが完全な位置まで戻りきらなかった。減速して空力負荷が下がった段階でようやく完全に閉じるという挙動になっていた。つまり“途中で止まって見える”現象は、複雑な制御ではなく、単純に力が足りていなかったことによるものだった。FIAは問題なしと判断 ただし再発は許されないこの件についてFIAはメルセデスと協議を行い、説明に納得。違反や不正行為はないと判断した。また、メルセデスがすでにブラックリーのファクトリーで油圧システムの改良に取り組んでいることも確認されており、意図的な仕組みではないと裏付けられた。ただし、レギュレーション自体は明確であり、今後同様の“多段階的な動き”が再び確認された場合は、規則違反として扱われる可能性が高い。一時は“高度な空力トリック説”も浮上この挙動をめぐっては、当初さまざまな技術的推測が飛び交った。フロントウイングが段階的に変化することで、マシンの空力バランスをリア寄りに保ち、ブレーキング時の安定性を向上させるのではないかという見方や、エネルギー回生効率を高めるための仕掛けではないかという説もあった。さらに、ウイングの角度が徐々に変化することで前方ダウンフォースの移動をコントロールし、フロントロックを防ぎながらより低い車高設定を可能にするという分析も出ていた。しかし実際には、こうした“巧妙なトリック”ではなく、むしろパフォーマンス的には不利に働く単純な問題だった。特にブレーキング時の挙動に悪影響を及ぼし、ラップタイム面でもメリットはなかったと分析されている。今回の件は、2026年F1に導入されたアクティブエアロの厳格な運用基準を改めて浮き彫りにした。メルセデスのケースは違反ではなかったものの、今後はより厳しい監視の対象となることは間違いない。