マクラーレンの2015年F1マシン『MP4-30』は、チームの歴史のなかで最弱のマシンとして名を残すことになった。2015年、ホンダはマクラーレンのワークスエンジンパートナーとして2008年以来7年ぶりのF1復帰。1992年のMP4/7A以来となる“マクラーレン・ホンダ”のコンビが復活。だが、過去に黄金時代を築いた“マクラーレン・ホンダ”への期待は脆くも崩れ去った。
マクラーレン MP4-30は、空力メリットを得るためにマシン後部をタイトに絞り込んだ“サイズゼロ”コンセプトを採用。ホンダはメルセデスと同じ“スプリットターボ方式”を採用し、非常にコンパクトなパワーユニットを設計した。しかし、ホンダのF1パワーユニットは、そのアグレッシブな設計ゆえに冷却系の問題が発生。また、シリンダーバンク内に収められたコンプレッサーを小型化した結果、MGU-H(熱エネルギー回生)の発電量が不足し、デプロイメントの問題にも悩まされた。マクラーレン・ホンダ MP4-30は、カラーリングはボーダフォンカラー以前のMP4-20に近いノーズに赤い縁取りのシルバーアローカラーで開幕を迎えるが、第5戦スペインGPで、グラファイトグレーを基調とした新カラーリングに変更された。ノーズは前方へ低く長く伸びたデザインを採用したが、第8戦オーストリアGPより先端に突起のついたショートノーズに変更された。プレシーズンテストでは走り始めからトラブルが多発。合計周回数は参加9チーム中最下位。開幕戦オーストラリアGPでは気温上昇による熱害を避けるため、パワーユニットをセーブして走行。決勝はプレシーズンテストでクラッシュしたフェルナンド・アロンソの代役のケビン・マグヌッセンがスタート前にリタイア、ジェンソン・バトンは完走11台中最下位だった。第6戦モナコGPでバトンが8位入賞し、初ポイントを獲得。第8戦イギリスグランプリではアロンソが10位入賞した。第10戦ハンガリーGPでは、フェルナンド・アロンソが5位入賞、ジェンソン・バトンが9位入賞となり2015年シーズン初のダブル入賞となった。第11戦ベルギーGPでは新スペックのエンジンを投入。部品交換によるグリッド降格ペナルティが2台合計105グリッド(アロンソ55・バトン50)に達した。だが、パフォーマンス不足は否まず、ホンダの地元レースである第14戦日本GPでは、マシンの遅さに苛立ったフェルナンド・アロンソが、無線で叫んだ「GP2エンジン」というフレーズは、F1史に悪名高い無線のひとつとして残ることになった。最終的に新生マクラーレン・ホンダは、6回の入賞を果たすにとどまり、29ポイントの獲得でコンストラクターズ9位とチーム史上最悪の結果でシーズンを終えることになった。2回のF1ワールドチャンピオンであるフェルナンド・アロンソも11ポイントの獲得で17位と、ミナルディでのデビューシーズン以外では最悪の結果となった。