英国高等法院は、フェリペ・マッサが起こしている「2008年F1世界選手権の損害賠償請求訴訟」について、FOM、元F1最高責任者バーニー・エクレストン、FIAによる“訴訟棄却の申し立て”を退け、正式に審理入りする判断を下した。この訴訟は、2008年シンガポールGPで起きたルノーの“クラッシュゲート”がタイトル争いに決定的な影響を与えたとして、マッサが 6400万ポンド(約84億円) の損害賠償を求めているもの。
ネルソン・ピケJr.が意図的にクラッシュし、チームメイトのフェルナンド・アロンソを勝利に導いたことで、当時フェラーリのタイトル候補だったマッサは順位を落とし、最終的にルイス・ハミルトンに1ポイント差でチャンピオンを失った。この八百長は翌2009年まで公にならず、シーズン結果は確定扱いとなっている。裁判所「マッサには“勝算がある”」と判断10月の口頭弁論で、被告側は「訴訟は無効」と主張したが、判事ロバート・ジェイはこれを退けた。被告は「FIAに調査義務があったとしても、それはマッサ個人に対する義務ではない」と反論し、判事もこの点では被告の主張を認めた。一方で、マッサが“調査を求めなかった責任”を指摘する被告側の主張は却下された。2023年のエクレストン発言により、マッサが“初めて本質的事実を知り得た”と認定されたためだ。マッサの訴えの一部は時効やフランス法の適用で制限されるものの、判事は 「契約違反誘発および共謀に関する主張には実質的な勝算がある」 と述べ、審理続行を認めた。ただし、判事は「マッサが勝訴に足る証拠を揃えるのは容易ではない」とも言及しており、長期にわたる攻防が予想される。マッサ「これは私にとって、そしてF1にとって“重要な勝利”だ」マッサは今回の決定を受け、声明で強い決意を語った。「これは特別な勝利だ。私にとって、正義にとって、そしてF1を愛するすべての人のための重要な一日だ」「2008年の真実を覆い隠そうとした者たちに、裁判所はそれを許さなかった。あの故意のクラッシュは、私のタイトルを奪い、当時の権威はスポーツの誠実さを守る代わりに事実を隠す道を選んだ」「彼らはこの訴訟を止めようとあらゆる手段を使ったが、我々は正義のために戦っている。今日はその大きな前進だ」「全ての文書、全ての通信、全ての証拠を調査し、この共謀を明らかにする。真実が完全に示されれば、正義は必ず実現する。ブラジルの人々のために、ティフォシのために、モータースポーツを愛するすべてのファンのために、そしてF1の未来のために」タイトル結果は“覆らない”が、争点は「損害賠償」判事は明確に、裁判所は2008年の王者を変更する権限を持たない と指摘しており、争点はあくまでも損害賠償の有無となる。しかし今回の判断により、マッサ側は被告側のメール・テキスト履歴など、追加資料の開示を求める権利を得るとされ、今後の攻防はさらに激化する可能性が高い。マッサが長年主張してきた「2008年の真実」は、ついに司法の場で本格的に審理されることになった。
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