佐藤琢磨の息子、佐藤凛太郎がFIA F4ワールドカップ(マカオGP)の決勝で11番手から驚異の追い上げを見せ、堂々の3位表彰台を獲得した。一方で決勝前日に行われた予選レースでは、3位フィニッシュから一転、手続き上の違反により30秒加算の重いペナルティを受け、11位に降格する波乱もあった。決勝ではジュール・ルーセルが初代王者となり、ライアン・ケレッティとの激しい攻防はクラッシュで決着。2位にはエマヌエーレ・オリヴィエリが入り、凛太郎は混戦を生き抜き見事な表彰台をつかんだ。
■ 予選レース:凛太郎は3位フィニッシュも、フォーメーションラップの手続き違反で11位に降格予選レースで凛太郎は7番手スタート。リスボアへ向かう1周目、前方で2台がクラッシュしたため2つ順位を上げ、その後の周回でもさらに2台がクラッシュしたことで3番手に浮上した。セーフティカー明けもこの3位を維持し、最終ラップのリスボアではジュール・ルーセルの攻撃を受ける展開となった。マルコヘアピン出口では、2番手を走っていたフィオン・マクラフリンがクラッシュし、凛太郎は一時2位に浮上。しかしその後の立ち上がりでルーセルに並ばれ、最終コーナーでオーバーテイクを許し3位でチェッカーを受けた。ところがレース後、凛太郎には「10秒のストップ&ゴー」に相当する30秒加算ペナルティが科された。これはフォーメーションラップ開始時に一度遅れ8番手へ後退しながら、最初のセーフティカーラインまでに本来の7番手へ戻らなかったことによる手続き違反だった。凛太郎は3位フィニッシュ時に「とても嬉しい」と語り、1周目を「クラッシュの回避がとても大変だった」と振り返った。また後半でルーセルに追い詰められた理由について、次のように説明した。「前の周で少しウォールに触ってしまって、マシンが少し壊れてしまった。最後の数周はスローパンクチャーだったと思う。だから後ろから来るルーセルを抑えるのが難しかった」「最終ラップでは、2番手のマクラフリンがマルコの後でクラッシュして、僕は避けるためにブレーキしなければならなかった。その時にはジュールが本当に真後ろ、ギアボックスに入るくらいの距離にいた。最後の2つのコーナーでは、昨日の予選で僕がクラッシュしていたこともあって、攻めるのが少し怖かった」ペナルティ適用前は決勝に向け自信を見せていたが、これにより本来の予想より8つ下のグリッドから決勝をスタートすることになった。■ 決勝レース:ルーセルが初代王者に ケレッティとの首位攻防はクラッシュで決着決勝の10周レースは、ルーセルとケレッティが序盤からリードを争う展開となった。ルーセルは2番グリッドから好スタートを決め、ポールのエマヌエーレ・オリヴィエリを第1コーナーで抜いて首位を奪取。ケレッティもこれに続いてオリヴィエリをパスした。しかしその直後、マンダリン後でジモ・チャンがスピンし、佐藤樹と接触。キュウホ・リーもリスボアでウォールに突っ込み、中村紀庵ベルタはメカニカルトラブルで十分な速度が出せずピットイン。多重クラッシュのためセーフティカーが導入された。再スタート後、ケレッティはリスボアでインに飛び込み一度は逆転。だが8周目、ルーセルがマンダリンを内側からオーバーテイクして首位を奪い返した。これに焦ったケレッティは山側区間でスライドし、ソリチュード・エセズ入口でウォールにヒットしてリタイアとなった。後続は急ブレーキと回避を強いられ、オリヴィエリは慎重な判断で接触を回避。ルーセルはそのままトップを守り、セーフティカー先導のままフィニッシュして初代王者の座を手にした。■ 凛太郎は11番手から驚異の追い上げで3位表彰台 “勝負強さ”が光る決勝で凛太郎は11番手からスタートしたが、序盤の混乱を巧みに回避しながら着実に順位を上げ、トップ争いの隊列に追いついた。ケレッティのクラッシュ時も冷静にマシンをコントロールし、3番手をしっかりキープ。セーフティカーのままレースが終了したことで、そのまま表彰台を獲得した。マカオはF4マシンでも極めて難度が高く、11番手からの表彰台は大きな価値を持つ。予選レースの不運とペナルティを乗り越え、レース運びと判断力の高さを示す内容となった。FIA F4ワールドカップ(マカオGP)決勝結果1 ジュール・ルーセル2 エマヌエーレ・オリヴィエリ3 佐藤凛太郎4 セバスチャン・ウェルドン5 アリー・バンサル6 フィオン・マクラフリン7 トーマス・ベアマン8 ユーツァイ・チャン9 マーカス・チョン10 ジノ・トラッパ11 ティアゴ・ロドリゲス12 ユジェ・ワン13 エミリー・コティ14 中村紀庵ベルタRet ライアン・ケレッティRet アレクサンドル・ムニョスRet キュウホ・リーRet 佐藤樹Ret ジモ・チャン最速ラップ:セバスチャン・ウェルドン(2分24秒425)
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