2025年F1ラスベガスGP 決勝で各ドライバーが使用可能な持ちタイヤ数と予想されるタイヤ戦略を公式タイヤサプライヤーのピレリが発表した。雨が叩きつけるワイルドな夜のラスベガスで、最も強運な手札を引いたのはランド・ノリスだった。彼は今季7回目のポールポジションを獲得し、マックス・フェルスタッペンとカルロス・サインツを抑えた。
では、決勝日にはどのような戦略が考えられるのか。予想される選択肢を詳しく見ていこう。昨年はどうだったのか?レース前のシミュレーションでは「ミディアム→ハード」の1ストップが最速とされていたが、それを試したドライバーはほとんどいなかった。全20台がハードタイヤを2セット温存しており、それをレースで使う構えだった。トップ9は全員が「ミディアム→ハード→ハード」という2ストップ戦略を採用。10位でフィニッシュしたセルジオ・ペレスは「ハード→ミディアム→ハード」と変則的なタイヤ運用を行い、15番グリッドからの巻き返しを狙った。2ストップ化が進んだのは、セーフティカー(実際も仮想も)や赤旗による中断ではなく、レース序盤のペースの速さによるものだった。ミディアムを温存して走るにはペースが速すぎたのだ。トップ9の1回目のピットストップは9〜14周目、2回目は25〜33周目に集中。優勝したジョージ・ラッセルは12周目と32周目にストップしていた。別戦略を採ったペレスは、1スティント目のハードを17周まで引っ張り、そこからミディアムを15周使用して32周目に再びハードへ。11位のフェルナンド・アロンソはソフトでスタートし、わずか4周でピットイン。その後、2スティント連続でハードを使用した。ソフトタイヤを使ったのは他に2人。ランド・ノリスはファステストラップ狙いで短く使用。エステバン・オコンは「ミディアム→ハード」の1ストップを試みたが、50周レースのうち45周でタイヤが終わってしまった。今年の最速ルートは?さて、今年はどうかというと……興味深い状況だ。今日得られたデータはすべて「ウェットからインターへ」「インターからソフトへ」の交換タイミングに関するものであり、高燃料時のロングランデータは得られていない。本来ならFP2のデータを使用したいところだが、セッション前半に赤旗が2回も出たため、意味のあるロングランは不可能だった。FP1は路面が非常にスリッピーで、F1ドライバーよりフィギュアスケーターの方がふさわしいほどだった。つまり、今回は例年より不確実性が高い。この前提を踏まえたうえで、シミュレーション上で最速とされているのは「ミディアム→ハード」の1ストップ。ピットインの最適周回は20〜26周目で、これは2ストップより約4秒速いとされている。トップ10勢のもう一つの選択肢「ミディアム→ハード→ハード」は、1ストップ戦略に非常に僅差で迫るタイムを持ち、安全車が出た場合にその間にピットできればより有利になる。この場合の1スティント目は12〜18周、2回目のピットは27〜33周となる。トップ10のドライバーは全員、ハードタイヤを2セット温存しており(ザウバーを除く)、オープニングラップでのバトルが激しくなればこの戦略が採用される可能性が高い。ミディアムタイヤは序盤にグレイニング(表面摩耗)を起こしやすく、じっくりと温めて使用するのが理想的だが、その余裕は多くのドライバーに与えられないだろう。ピレリのモータースポーツ・ディレクター、マリオ・イゾラはこう語る。「1ストップがトラックポジション(位置取り)の観点から有力候補であるのは分かっていますが、多くのチームが明日のためにハードを2セット残したという事実が、それを物語っています。昨日はミディアムとソフト両方でグレイニングが出ていましたから」ワイルドカード:アロンソの戦略は?フェルナンド・アロンソはハード2セットに加え、ミディアムも2セット保持している。レース終盤、燃料が軽くなりギャップも広がる頃には、ミディアムでグレイニングを抑えるのも比較的容易になる。そのため、アロンソは「ミディアム→ハード→ミディアム」の戦略をとる可能性がある。この場合、1回目のピットは14〜20周、2回目は32〜38周となる。後方グリッド勢の狙い目は?今年は後方に速いマシンが揃っている。そのため、一般的な戦略から外れた独自ルートを取るのが上位進出への鍵となる。「ソフト→ミディアム→ソフト」の2ストップは、8〜14周と34〜40周にピットウィンドウが設定されており、短時間で速く走ることが求められる。オープニングで猛ダッシュし、中盤にアンダーカットでクリアエアを得て走り、終盤も短いスティントで再度アタックする……理論上は良さそうに見えるが、うまくいくには多くの条件が揃う必要がある。天気はどうなる?パドックの公式予報では、雨の心配はまったくないとのこと。しかし、気温はこれまでの週末よりやや高めで、気温は15〜16℃、路面温度はおよそ20℃になる見込み。つまり、これまでより“通常の”コンディションに近づくことになるが、今週のラスベガスでは“通常”がすでに異常な状態を指すという皮肉な事実もある。各チームは、走りながら学習することになりそうだ。