2016年のF1日本GPは、その歴史のなかで最低の観客数を記録することになった。今年は、1987年に鈴鹿サーキットで最初のグランプリが開催されてからF1日本GPの連続開催30回目の記念すべき1年となった。(鈴鹿で28回、富士で2回)。しかし、3日間の観客数はその30年の歴史のなかで過去最低となる14万5000に留まった。
1日で7万人という数字はスポーツでは決して低いものではないが、F1日本GPはバブルが弾けた後も全盛期には3日間で30万人を超え、決勝日だけでも今年の倍となる16万人以上を動員していた。なぜここまで観客は減少しているのだろう。カリスマ性のあるF1ドライバーの不在過去にはアイルトン・セナ、アラン・プロスト、ナイジェル・マンセル、ミハエル・シューマッハといった強烈な個性を持ったドライバーがF1人気を牽引してきた。だが、ミハエル・シューマッハが2006年に一度目の引退をして以降、フェルナンド・アロンソ、キミ・ライコネン、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテルといったドライバーはいるが、過去ほどF1人気を牽引することはできていない。また、日本人ドライバーも2014年の小林可夢偉を最後にF1グリッドからは姿を消している。富士スピードウェイの復活と再撤退ミハエル・シューマッハが引退した翌年の2007年、コースの安全性や施設の老朽化が問題化された鈴鹿に代わって、30年ぶりに富士スピードウェイで開催。しかし、悪天候と“チケット&ライド方式”の失敗による交通情報の麻痺、仮設観客席からコースが見えないなど運営面の問題により日本GPの歴史に汚点を残す結果に。翌2008年には観客数が6万9000人、約25%と大幅に減少した。リーマンショックと日本企業の撤退さらに追い打ちをかけるように2008年にはリーマンショックが発生。ホンダがF1から撤退し、翌年末にはトヨタ、ブリヂストンがF1から撤退。スポンサーを除く日本企業が姿を消した。2009年からは鈴鹿サーキットにF1日本GPが戻ったが、観客数は戻らず、そこからは減少の一途をたどっている。この頃から若者の自動車への関心の減少も懸念されている。フジテレビの地上波放送の終了フジテレビは、2012年に25年放送してきた地上波でのF1放送を終了。BSフジでの無料放送へ移行したが露出は大きく減少。さらに2016年は日本GPこそ特番が組まれたが、それ以外のレースはCS放送のみで、無料放送はなくなっている。レギュレーションの変更とコスト削減近年のF1は予選方式やタイヤ、エンジンのルールなど、常にF1をフォローしているファンでなければ“難しい”と感じるレギュレーションとなり、変更回数も多い。また、コスト削減を理由にF1マシンへの規制が激しくなり、均一化の方向へ向かっている。さらにF1マシンに大きな変化があった2010年の翌年からはレッドブルが4連覇、新たに“パワーユニット”が導入された2014年からはメルセデスが圧倒的に支配するなど1強時代が続いている。コスト削減と規制によって他チームが巻き返すチャンスはなく、純粋なドライバー同士の戦いというよりも、マシン依存の傾向が強まっており、予選を終えた時点で優勝予想はほぼ終わってしまう。遅いマクラーレン・ホンダ2015年、ホンダがマクラーレンのパートナーとしてF1に復帰し、過去に一時代を築いた“マクラーレン・ホンダ”がF1に復活。しかし、ホンダのエンジンは散々たるもので、2年目の今年は改善してはいるものの、ホームレースの鈴鹿では惨敗。マクラーレン・ホンダの優勝を期待させるような戦いはできていない。3年目となる来季は表彰台や優勝争いを目指しているが、蓋を開けてみるまでどうなるかはわからない。価値観の変化に対応した新規ファン獲得の失敗F1の人気低迷は、日本だけに限ったことではない。ヨーロッパでもテレビ視聴率へ動員数は減少している。価値観も変化し、F1チケット代は“高い”ものとなり、IT文化が発展するなかで情報収集の方法も変化。新規ファンの獲得に苦労している。今年、アメリカのエンターテインメント界で成功を収めているリバティ・メディアがF1買収を発表。IT関連での成長を目指している。また、2017年からはF1マシンが大幅に変更となり、よりドライバーの腕が試されるものになるとされている。この2つがF1の人気の回復にどう影響するかだろう。セバスチャン・ベッテルに“神が作ったコース”と言わしめ、F1ドライバーに人気の高い鈴鹿サーキット。数は減ったとはいえ、サーキットに集まるファンはどのドライバーにも公平で、ドライバーからも絶賛されている。F1日本GPの開催契約は2018年までとなっている。F1日本GP 観客数の推移  3日間フリー走行予選日決勝日2016年145,00027,00046,00072,0002015年165,00030.00054,00081,0002014年150,00030,00048,00072,000 2013年171,00033,00052,00086,000 2012年208,00041,00063,000103,000 2011年199,00034,00063,000102,000 2010年190,00033,00061,00096,000 2009年210,00031,00078,000101,0002008年 ※1213,00037,00071,000100,0002007年 ※1282,00052,00090,000140,000 2006年361,00057,000143,000161,0002005年320,00054,000110,000156,0002004年210,00054,0000 ※2156,0002003年329,00054,000120,000155,0002002年326,00053,000118,000155,0002001年310,00050,000110,000150,0002000年318,00052,000115,000151,0001999年318,00052,000120,000146,0001998年318,00050,000120,000148,0001997年317,00065,000112,000140,0001996年303,00054,000110,000139,0001995年330,00060,000125,000145,0001994年357,00067,000135,000155,0001993年350,00067,000132,000151,0001992年332,00056,000126,000150,0001991年337,00069,000120,000148,0001990年316,00060,000115,000141,0001989年283,00051,000100,000132,0001988年233.00037,00075,000121,0001987年225,00036,00074,000112,000※1 富士スピードウェイ※2 台風により土曜日のセッションが全てキャンセル
全文を読む