ジャック・ドゥーハン(アルピーヌ)は、2025年シーズン終盤のF1復帰を目指していたものの、その可能性は完全に閉ざされた。シーズン最終3戦での再登板という道も、チームの決定により事実上消滅した。オーストラリア出身のドゥーハンは今季序盤6戦でフラビオ・ブリアトーレ代表のもとアルピーヌから参戦したが、早々にフランコ・コラピントと交代させられた。コラピントは昨冬にウィリアムズから移籍し、複数年のリザーブ契約を締結していたことから、ドゥーハンの立場は開幕前から不安定だった。
当初、アルピーヌは「評価目的の交代」と説明していたが、ブリアトーレ自身が後にその説明を否定。ドゥーハンには「コラピントが十分な結果を出せなければ再起用の可能性がある」と伝えられていたものの、チームはその機会を与えなかった。コラピントは一時低迷し、ピエール・ガスリーが3度入賞した一方でノーポイントが続いたが、アルピーヌは再交代に踏み切らなかった。夏前にはピレリテストでのクラッシュもあったが、チームは支援スポンサー「メルカド・リブレ」との契約を重視。アメリカ、メキシコ、ブラジルの3連戦でマシンに同社のロゴが入ることもあり、コラピントが残留する形となった。ドゥーハン側はブリアトーレに資金を用意し復帰交渉を進めていたが、結果的に実現には至らなかった。現在もアルピーヌのリザーブドライバーとして登録されているものの、レース復帰の見込みは薄い。アルピーヌ内での立場悪化と2026年の不透明な見通しドゥーハンは、交代以降アルピーヌの旧型車テスト計画からも外れ、予定されていたテストは中止。シミュレーター作業も限定的で、リザーブとしてチームに帯同しつつも実質的には戦力外状態に置かれている。2026年のレースシートは依然未定で、関係者によると決定は11月頃になる見通し。ブリアトーレは9月時点で「来季はコラピントかポール・アーロン」と明言しており、ドゥーハンの名前は候補に挙がっていない。アーロンはメキシコGPのFP1でアルピーヌを再びドライブする予定だ。他チームとの接触と将来への模索ドゥーハンはアルピーヌ離脱を視野に入れ、キャデラックF1、ウィリアムズ、ハースF1チーム、ザウバーと接触したとされる。いずれも来季のシートは埋まりつつあり、仮に移籍してもテストまたはリザーブ要員としての起用が現実的だ。それでも、アルピーヌでの冷遇を経験したドゥーハンにとって、新天地はキャリア再構築の機会となる可能性がある。彼は依然として「アルピーヌのレースシート復帰」を第一希望に掲げているが、その道は極めて険しい。コラピントは残留へ前進もチーム内での評価は微妙一方のコラピントは、依然として今季ノーポイントだが、後半戦ではガスリーを予選・決勝ともに上回る場面が増えた。夏休み以降の5戦で3度ガスリーを凌ぎ、走りの安定感も改善。ザントフォールトではシーズン最高位の11位を記録した。ただ、アメリカGPでは燃料節約下で「チームオーダーを無視」してガスリーを抜くなど、内部での摩擦も発生。コラピントはその後「チームの指示は常に守らなければならないことが明確になった」とコメントし、関係修復を図っている。それでも、ブリアトーレのもとでのドライバー評価は流動的だ。ドゥーハンのように資金と政治のバランスで左右される環境のなか、若手にとってアルピーヌのシートは依然として“安定とは程遠い”立場である。