2026年F1シーズンの新レギュレーションを巡っては、開幕直後から「エネルギー回生量が多すぎる」「ストレートで失速する」などの懸念が各方面から噴出していた。その中でFIAはマイアミGPから予選時のエネルギー回生上限を調整する新運用を導入。だが、一見すると“7MJに削減”と発表されたにもかかわらず、マイアミでは実際には「8MJ」が適用されたことで混乱も広がっていた。
今回、『The Race』が明かした内容によって、その仕組みの全体像が見えてきた。「7MJ化」の正体は“基準値引き下げ”だったFIAは当初、2026年レギュレーションで予選時の回生上限を1周あたり8.5MJに設定していた。しかしコースごとの特性差が非常に大きく、サーキットによっては十分な回生が不可能になるケースが発生。特に高速サーキットでは、回生不足を補うために不自然な“充電走行”が必要になる懸念があった。そのためFIAは以前から、一部サーキットでは8MJまで引き下げ可能としていた。今回の変更は、その“引き下げ基準”自体をさらに1MJ削減し、8MJ→7MJへ変更したというものだ。つまり、マイアミで8MJだったのは「減っていない」のではなく、もともと9MJ想定だったものが8MJへ下げられていた形になる。FIAはサーキットごとに回生量を調整FIAは現在、各コースのブレーキング特性や部分負荷領域を分析しながら、イベントごとに予選回生上限を個別設定している。これは2026年型PUの最大の特徴である「電動50%・内燃50%」構造を成立させるためでもある。固定値にしてしまうと、モンツァのような回生が難しいコースでは極端なエネルギーマネジメントが必要になり、逆にモナコのような低速コースでは余裕が生まれすぎる。FIAはそのバランスを取るため、サーキット別の“エネルギーランキング”を構築している状況だ。2026年F1 予選エネルギー回生上限ランキング現時点でFIAが想定している各GPの最大回生上限は以下の通りとなっている。■ モナコGP:9MJ■ ハンガリーGP:9MJ■ シンガポールGP:9MJ■ アゼルバイジャンGP:8.5MJ■ メキシコGP:8.5MJ■ マイアミGP:8MJ■ ベルギーGP:8MJ■ スペインGP:8MJ■ アメリカGP:8MJ■ カタールGP:8MJ■ イギリスGP:7.5MJ■ オランダGP:7.5MJ■ バルセロナGP:7MJ■ アブダビGP:7MJ■ ブラジルGP:6.5MJ■ カナダGP:6MJ■ オーストリアGP:6MJ■ ラスベガスGP:6MJ■ イタリアGP(モンツァ):5MJモンツァが最低値となっているのは、高速レイアウトゆえに回生機会が極端に少ないためだ。一方でモナコやシンガポールは低速区間とブレーキングが多く、エネルギー回収が容易なため最大9MJまで許容されている。FIAは“充電レース化”回避を最優先今回の調整で最も重要なのは、FIAが「回生ゲーム化」を強く警戒している点だ。2026年レギュレーションでは、電動比率拡大によって“どこでエネルギーを使うか”がラップタイムを大きく左右する。しかし回生量が不足すると、ドライバーが本来のアタックではなく“バッテリー充電のための走行”を強いられる可能性がある。FIAはそれを避けるため、各コースに応じて柔軟に回生上限を変更する方向へ舵を切った。実際、規則には「過度な回生戦略が必要になる場合は5MJまで引き下げ可能」と明記されており、今後さらに調整が進む可能性もある。2026年F1は“PU性能”だけでは戦えない時代へこの新システムによって、2026年F1では単純なパワーユニット出力だけでなく、“エネルギー運用効率”そのものが勝敗を左右する時代に入った。特にモンツァ、カナダ、ラスベガスのような回生不利コースでは、PUメーカーごとの差がより露骨に表れる可能性がある。逆にモナコやシンガポールでは、エネルギーマネジメント性能を持つチームが大きな武器を得ることになる。FIAはすでに2027年以降のさらなる調整も検討しており、2026年F1レギュレーションは今後も“進化型ルール”として変化を続けていきそうだ。