2021年のF1開幕戦は、空力規則の変更によってレッドブル・ホンダの“ハイレーキ”とメルセデスの“ローレーキ”がどのような影響を受けたかが話題のひとつとなった。F1ジャーナリストのマーク・ヒューズが The Race で考察した。F1バーレーンGPでは、王者メルセデスF1の競争力の低下が話題となった。予選ではレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがルイス・ハミルトンに0.4秒差をつけてポールポジションを獲得。昨年とは真逆の幕開けとなった。
新型コロナウイルスの影響によって18インチタイヤの導入が2022年に延期されたことで、2020年に新型タイヤの導入を不採用とされたピレリは、空力開発の発展をまったく見込んでいない設計のタイヤを供給することとなり、F1はリアタイヤへの負荷の増加を抑えるためにリアダウンフォースを10%削減することを目的とした技術規則の変更を行った。結局、ピレリは2021年により強固なタイヤ構造を導入することが承認されたが、その理由はF1チームがより低いタイヤ圧で走ることが可能になるからだった。また、ダウンフォースを減らすという目的を達成するための方法は、F1チームに決定が任されていた。フロア面積のトリミングはF1チームが同意したものであり、ローレーキのチームも反対はしなかった。フロア下のダウンフォースは、フロア面積あたりに生成される負圧量に総面積を賭けたものとなる。前傾姿勢をとったハイレーキのマシンは単位面積あたりでより多くの負圧を生成し、ローレーキはそれを補うためにホイールベースを長くして長いフロアを設けている。だが、F1チームがレギュレーション変更に同意した当初は、フロア面積の削減と、フロアを密閉する渦を生成するスロットを禁止することにより、、多くの総床面積を失うことになるローレーキのマシンに影響がでるのか、それとも、非常に高いリアライドハイトで流れを維持するためにサイドのシーリング(密閉)に依存していたためハイレーキの方が影響が出るかは定かではなかった。だが、F1バーレーンGPでは、ハイレーキのレッドブルが昨年比で1秒程度の遅れだったのに対し、ローレーキのメルセデスは2秒程度と大きく遅くなっており、レーキ哲学が勢力図の変化の要因であることを強く示唆した。F1バーレーン予選でのメルセデスからレッドブルへの具体的な“1秒”の差はセクター2のターン5/6と9/10でついた。両方とも複合コーナーであり、ローレーキカーが負けていたメカニズムを強く示唆している。それぞれのアプローチには常に賛否両論がある。しかし、ローレーキの主な欠点の1つは、フロア下の空力がうまく機能する速度粋のウィンドウが狭いことだ。F1マシンは、低速ではアンダーステア、高速ではオーバーステアを望んでいる。また、高速で十分な安定性を維持するためにアンダーステアをセットアップに組み込む必要があり、単純にそれは低速でのアンダーステアを増加させる。それを補う方法は、空気圧の中心点を低速コーナーで前進させることだ。これは、ハイレーキで自然に発生している。速度が下がるとレーキ角が増加し(ダウンフォースが速度とともに減少するほどリアが強く押し下げられなくなるため)、フロントウイング(およびフロアの前縁)が地面に近づき、よりアグレッシブな迎え角となることで低速でのアンダーステアを補うのに役立つ。したがって、コーナーの速度差が大きいトラックは、ハイレーキにより有利となる(したがって、メルセデスF1にとって、ハンガロリングとセパンは他のトラックに比べて歴史的に困難となっている)。バーレーンでのコーナースピードの差は極端ではないが、ターン5/6とターン9/10に共通しているのは、遅いコーナーに流れ込む速いコーナーであり、理想的に圧力の中心点を大きく変化する必要があると言う点だ、ハイレーキのレッドブル・ホンダのバランスは、これらの2つの減速するシーケンスを通じて、メルセデスよりもはるかに一貫しているようだった。これは、事実上メルセデスのラップタイムの赤字のすべてを占めていた場所だった。マシンが通過する速度が一定の従来のコーナーでは、メルセデスはレッドブルと同じくらいの速さをみせていた。したがって、レッドブルとメルセデスの差はダウンフォース量と言うわけではなく、複合コーナーでのバランスの変化ものだった。それは間違いなくローレーキに関連する制限となっているようだ。
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