カルロス・サインツJr.は、F1のレース中継のあり方を批判し、重要なレースシーンよりもドライバーの恋人やセレブリティのリアクションに焦点を当てすぎていると指摘した。シンガポールGPでは、最後方から追い上げて10位でフィニッシュするというサインツの見事な走りがほとんど中継されず、レース全体も退屈な展開として放送された。終盤にはフェルナンド・アロンソがフェラーリのルイス・ハミルトンに迫る場面もあったが、それもほとんど映されなかった。
一方で放送の多くは、マックス・フェルスタッペンとランド・ノリスの2位争いに割かれていた。レース中の映像は各国の放送局ではなく、F1が統括するワールドフィードによって一括管理されている。近年は、ガレージ内での恋人や家族、セレブリティのリアクションを映すカットが頻繁に挿入されるようになっているが、サインツはこれを「時代遅れの演出」だと批判した。「こういう映像が流行った時期もあったと思う。視聴者が僕たちの彼女や有名人を見るのを面白がっていた時代がね」とサインツはスペインのラジオ番組『El Partidazo de COPE』に語った。「オーバーテイクや緊張した場面でリアクションを映すのは理解できる。でもそれは“競技を尊重する”という前提のもとでやるべきだ。レースの重要な瞬間は常に映してほしい」「先週末は、僕が終盤にした4〜5回のオーバーテイクのどれも放送されなかった。フェルナンドがルイスを追っていた場面もそうだ。本当に多くの瞬間を逃していた」とサインツは続けた。さらに、F1は「スポーツ」と「ショー」の境界線を見直すべきだと訴える。「セレブや恋人を映すのはいいけれど、主軸を見失ってはいけない。彼らを映しすぎなんだ」と語った。「パドックにはVIPが多すぎて歩けないこともある。だから僕たちはバイクやスクーターで移動しているんだ。そうしないと身動きが取れないくらいだよ」F1は次戦、10月19日にアメリカ・オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催されるアメリカGPに臨む。放送演出とスポーツ性のバランス──サインツの批判が示す課題今回のサインツの発言は、F1の「スポーツ」と「ショー」の境界が揺らいでいる現状を象徴している。Netflixの『ドライブ・トゥ・サバイブ』以降、F1はドラマ性を強調する方向へ舵を切ったが、その副作用として純粋なレース映像の欠落が目立つようになった。特に、静かな展開のレースでは、演出としてガレージやVIP席のリアクション映像を多用する傾向がある。しかし、それが競技としての緊張感やドライバー同士の攻防を伝える妨げになっているとすれば本末転倒だ。サインツが指摘したのは「F1が何を見せたいのか」という根本的な問題である。ファンは華やかなパドックの裏で起きているドラマよりも、トラック上のリアルな戦いを求めている。この発言は、エンターテインメント性を重視する現代のF1に対し、ドライバー自身が“原点回帰”を促す警鐘とも言えるだろう。Source: ESPN
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