2026年F1参戦初年度を迎えるキャデラックF1は、バルセロナで行われた5日間のプレシーズンテストで最下位に沈んだ。だが、その事実だけで評価を下すのは早計だ。新規参戦チームにとって最重要課題は「走り出すこと」と「グリッドに並べるだけの最低限の速さと信頼性」を示すことであり、キャデラックはその最初の関門を着実に越えつつある。
キャデラックの最初の試練は、テストに間に合う形でマシンを完成させ、実走させることだった。12月にはフルカー・ダイノで初始動を行い、1月16日にはシルバーストンでのフィルミングデーでコースデビューを果たした。周回数はわずかだったが、バルセロナに向けた準備が整ったことを示す重要な節目となった。バルセロナ初日を終えた時点で、チーム代表グレアム・ロードンは、今回のテストの主眼が「デバッグ」にあると明言した。3日間の走行で記録した周回数は164周と、メルセデスの約3分の1に留まったが、新チームであることを考えれば想定内の数字でもある。とはいえ、開幕戦メルボルンに向けて、次回のバーレーンテストでは改善が不可欠だ。一方で、ペース面には慎重ながらも前向きな兆しが見えた。バルテリ・ボッタスが記録したキャデラック最速タイムは、テスト最速だったルイス・ハミルトンのフェラーリから4.572秒差。絶対的な競争力を測る指標ではないものの、タイム差は約6%で、107%ルールの範囲内に収まっている。しかも、この107%はQ1最速タイム基準で算出されるため、キャデラックが「グリッドに並ぶための速さ」を備えている可能性を示唆している。現実的に見れば、この新チームにとっての成功とは、安定して予選を通過し、信頼性を保ってレースを走り切ることだ。その2つのうち、少なくとも前者は射程圏内に入っているといえる。「最大の収穫は、ここまで全員が本当に懸命に働いて、このクルマと一緒にここに来られたことを誇りに思える点だ」とボッタスはバルセロナテスト後に語った。「ただ、やるべきことはまだ山ほどある。解決しなければならない問題も多いし、越えるべき山は高い。でも、一歩ずつ前進している。走行のたびにチームとしてまとまり、問題を解決しながら前に進めている」現代F1に通用する新チームをゼロから築く難しさは計り知れない。長年戦ってきた既存チームと違い、キャデラックはあらゆるパーツ、プロセス、施設を一から構築している最中だ。シルバーストンの拠点も、インディアナの本部も、完成まではまだ時間を要する。グリッド後方、あるいはそれ以上に遅れることは織り込み済みだった。スーパーボウルでのテレビ広告という大きな話題作りが注目を集める一方で、短期的な競争力については現実的な視点が欠かせない。「これは途方もない挑戦だ」とロードンは語る。「ここは世界モータースポーツの頂点だ。ふらっと来て、すぐに結果を出せる場所ではない。シニアレベルだけで見れば、我々は累計で約2500年分のF1経験を持っているが、一緒に働いた期間はまだ約11か月しかない。時間が必要なんだ」「チームスピリットは素晴らしい。F1は完全なチームスポーツで、全員が一丸となってマシン開発に取り組んでいる。F1マシンがどれほど複雑か、人は忘れがちだが、信じられないほど複雑で、通常は1000人規模の組織になる。それを築くには時間がかかるが、進歩にはとても満足している」次の焦点はバーレーンテストだ。バルセロナでは主にシェイクダウンと信頼性確認に重点が置かれていたが、次は純粋なパフォーマンス評価が求められる。「今週の目標は、あくまでシェイクダウンで、さまざまなチェック項目を消化することだった」とロードンは説明する。「パフォーマンスよりも、信頼性や安定したプラットフォームの確認が中心だ。バーレーンでは、実際にどれだけ速く走れるのか、パフォーマンスによりフォーカスしていくことになる」キャデラックF1は、まだ道半ばだ。しかし、F1参戦初年度における最大のハードル――“走れるマシンでグリッドに立つ”――という点では、確実に前進している。
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