アルピーヌの新マネージングディレクター、スティーブ・ニールセンは、エンストン拠点のF1チーム再建に向けた最優先事項を明確にした。20年以上ぶりにチームへ復帰したベテランは、自らの主眼が「我々にできる最高のマシンを作ること」にあり、そのために将来の成功へつながる困難な犠牲もいとわないと強調した。
アルピーヌが直面する状況は厳しい。チームはコンストラクターズ選手権で最下位に沈み、獲得ポイントはわずか20点。さらに2026年にはルノー製ワークスPUを捨て、メルセデス製カスタマーエンジンへと移行する大転換期を迎える。ワークスチームからカスタマーチームへと立場が変わるこの節目において、ニールセンの指導力はチームの軌道を決定づける重要な要素となる。最高のマシン作りを最優先にアルピーヌがSNSで公開したビデオメッセージの中で、ニールセンはチームの資源と結果の不一致を認めた。「我々には素晴らしい設備があるが、トラックに持ち込んだプロダクトは、ここの人々の努力や設備を反映していない」と語った。「私の最優先事項は、エンストンが我々にできる最高のマシンを生み出すことだ」ニールセンの熱意は現実的なアプローチと表裏一体だ。彼は目先のパフォーマンスと長期的な目標とのバランスの必要性を強調し、とりわけ2026年の規則変更に備える中でその重要性を認めている。「将来を見据える必要がある。短期的な成功を犠牲にして未来に投資しなければならない。我々は今まさにその過程にある」と語った。また彼のリーダーシップ哲学は、困難の中でこそ人の真価が明らかになるという信念に根ざしている。「物事がうまくいっている時よりも、悪い時にこそ人々が何者であるかがわかると私は強く信じている。そこでは人々が本当に何でできているのかが見える」と述べた。「深く掘り下げ、もう一段ギアを上げて前進し続ける人々がいる」古巣への帰還今回の復帰は、ニールセンにとって“帰郷”のような意味合いも持つ。彼は2005年と2006年にフェルナンド・アロンソがチャンピオンを獲得した時期のチームの一員であり、その後はウィリアムズ、トロ・ロッソ、ケータハム、ロータス、アロウズを経て、FIAやフォーミュラワン・マネジメントで要職を務めてきた。「多くの人はもう知らないと思っていたが、懐かしい人々と新しい人々が混在していた」と振り返る。「ここに戻れて本当にワクワクしている。ここに戻れたことは光栄だ。ここは私の家だ。私のプロフェッショナル人生の最大の部分を過ごし、最大の成功を収めた場所だ。そしてキャリアの後期にここへ戻ってこられたことは本当に光栄だ」ピットウォールから離れて過ごした10年近い歳月を経て、ニールセンは再び競争の渦中に身を投じる誘惑に抗えなかったという。「この8年間、私はレーシングチームにいなかった。F1にいた」と説明した。「F1での時間は素晴らしかったが、競争に伴う浮き沈みを味わえなかった。それが最終的に私が戻る決断をした理由だ。いわば私の家に戻るようなものだ。競争の激しさを恋しく思っていたからだ。だから、戻ってこられて本当に素晴らしい気分だ」アルピーヌ再建の鍵を握る存在「アルピーヌは非常に長く暗いトンネルにいる」と指摘する声もある中、チームが2026年に向けて大変革を迎える今、豊富な経験とマシン開発への集中を掲げるニールセンは、再建の立役者として期待される。エンストンの潜在力を解き放つべく、F1コミュニティの視線はアルピーヌを前線へ導けるかどうか、その手腕に注がれている。