ポルシェは2025年シーズンをもって、世界耐久選手権(WEC)のハイパーカークラスにおけるワークス参戦を終了すると発表した。同社は2024年にケビン・エストーレ、ローレンス・バントール、アンドレ・ロッテラーのクルーでドライバーズタイトルを獲得しており、今回の発表は大きな転換点となる。発表は火曜日に行われ、同時に北米IMSAスポーツカー選手権への継続参戦も明言された。
ポルシェは今後も「ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)」体制のもと、IMSAのGTPクラスで963 LMDhを走らせる。このプログラムと、フォーミュラEでのワークス参戦の2本柱が2026年以降のワークス活動となる。ポルシェの研究開発担当取締役でモータースポーツ部門も統括するミヒャエル・シュタイナーは次のように述べた。「現在の状況により、今季限りでWECへの参戦を継続できないことを非常に残念に思っている」声明では、IMSAへの継続参戦が「北米市場および耐久レースの重要性を強調するものである」とも強調された。「現在の状況」の詳細な説明はなかったが、PPMが2023年から続けてきたWECとIMSAの二正面体制を縮小する決断の背景には、ブランドとしての財務的課題があるとみられている。ポルシェは米国での輸入関税導入や中国市場での需要低下により販売が減少しており、CEOのオリバー・ブルーメは7月、2029年までに人員を10%削減する計画を発表した。また、販売台数のピークを2024年の30万台超から25万台程度に下方修正する方針も明かしている。ただし、ポルシェ・モータースポーツ代表のトーマス・ラウデンバッハは9月のオースティンWECラウンドで、LMDhプログラムの将来に関する決定は「財務的理由だけで判断されるものではない」と述べていた。彼はWEC運営への不満を口にし、「シリーズ内で改善すべき点がある」と語っている。さらにラウデンバッハは、バランス・オブ・パフォーマンス(BoP)に対しても不満をにじませ、「疑わしい結果が多く見られた」と発言した。彼は、6月のル・マン24時間でエストーレ、バントール、マット・キャンベル組の6号車がほぼ完璧なレースをしたにもかかわらず2位に終わったことを例に挙げた。「2位という結果自体は悪くない。だが、あの強豪たちを考えれば、あの6号車は“完璧なレース”だったと言える。率直に言って、6号車が勝って然るべきだった」と彼は説明した。フォーミュラEについては、2026/27シーズンから始まるGen4時代への参戦を継続することで、ポルシェの電動スポーツカー開発に「貴重な知見を得る」ことを目的としている。シュタイナーは「この競争環境の中で、我々は高性能車の開発をさらに推進していく」と述べた。ポルシェはまた、顧客チームによる活動を「モータースポーツ戦略の重要な柱」と位置づけ、引き続き支援を行うことも明言している。現在、ドイツのプロトン・コンペティションがWECでカスタマーポルシェ963を走らせており、マンタイ・レーシングは新型911 GT3-RでLMGT3クラスに参戦している。
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