2025年シーズン終盤、F1史に残るかもしれない“逆転劇”が進行している。レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンは、かつて55ポイント差を追う絶望的な立場にありながら、再びタイトル争いの中心へと返り咲いた。だが、その裏では「一時はF1への興味を失っていた」とヘルムート・マルコが明かしている。
フェルスタッペンは今季、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)に挑む形で5年連続王座を目指しているが、シーズン序盤はRB21の競争力不足により苦戦。しかし、イタリアGPで導入されたフロアアップデートを機に状況が激変した。マルコ「GTレースに気持ちが向いていた時期もあった」レッドブルのモータースポーツアドバイザー、ヘルムート・マルコはSky Sportsに対し、フェルスタッペンがタイトルを諦めかけていた時期があったことを認めた。「我々が競争力を欠いていた時期、マックスは少し興味を失っていた」とマルコは語った。「GTレースの方に気持ちが向いていたから、彼を良い気分に保つためにニュルブルクリンクの話などをしていたよ。でも今はクルマが機能していて、ニュルブルクリンクでの成功もあって、彼のモチベーションは完全に戻った。今は笑顔で、怒鳴ることもない。2コンマ(0.2秒)は彼自身のやる気から来ていると思う」RB21の進化がもたらした“覚醒”マルコは、フェルスタッペンの復活劇にはマシンの改良も欠かせなかったと強調する。「中速コーナーだとか温度の問題だとか、そういった話はもう過去のものだ。我々は上位にいるし、仮に1コーナーだけ遅れていても、その差はコンマ数千秒。以前のようにセクターごとに0.5秒も離されることはもうない」「マシンが大きく前進したことを示しているし、マックスはそれを最大限に引き出している。もしこの改善がもう少し早く来ていれば、チャンピオンシップの様相はまったく違っていたはずだ」「マクラーレンの助けが必要」マルコの現実的な見立てそれでもマルコは、タイトル奪還はフェルスタッペンとレッドブルだけの力では難しいと率直に語る。「我々だけでは成し遂げられない。マクラーレンの助けが必要だ」とマルコは述べ、「不可能ではない」と付け加えた。フェルスタッペン「信じるとかじゃない。1戦ずつ全力を尽くす」一方のフェルスタッペンは、タイトル争いについて問われても冷静な姿勢を崩さない。「信じるかどうかじゃない。僕はただ1戦1戦、ベストを尽くすだけだ」と語る。「今日は完璧な結果だったし、少しポイントを縮められたのは嬉しい。僕にとっても、ファンにとっても面白くなってきたと思うよ。ただ、レースペースにはまだ改善の余地がある。明日勝つためにはもっと良くする必要があるし、今はそれに集中している」5連覇のチャンスはあると感じているかとの質問に、フェルスタッペンはこう答えた。「そうだね、間違いなくチャンスはある。残りのシーズンでもこうした週末を積み重ねていくだけだ。僕たちはできる限りのことを試みるよ」「ワクワクしているし、シーズン終盤が本当に楽しみだ」分析:マックス復活の鍵は“心の再点火”と“RB21の成熟”フェルスタッペンの復活は、単なるマシン改良や戦略面の修正だけでは説明できない。マルコが語るように、彼のメンタルの立て直しが最も大きな要素だった。勝てない状況で一度は興味を失いながらも、チームの復調とともに再び闘志を燃やしたフェルスタッペン。その精神的な変化が、RB21の性能をも最大限に引き出している。イタリアGP以降、レッドブルは常に表彰台争いに絡むペースを維持しており、今やマクラーレンに対して互角以上の戦いを演じている。もしこの勢いが続けば、2025年のF1は“諦めなかった王者”の物語として記録されることになるだろう。