佐藤琢磨が、インディカー第17・18戦ヒューストンのレース週末を振り返った。ヒューストンの市街地コースで行われたインディカーレースは実にエキサイティングだったが、それでも佐藤琢磨の“不運の連鎖”を断ち切ることはできなかった。ただし、少なくとも佐藤琢磨とAJフォイト・レーシングを上り調子へと転換させることはできたようだ。
ダブルヘッダーで開催されるこのレースでは、第2ラウンドの最終ラップで佐藤琢磨が関係する大クラッシュが発生したものの、幸いにも佐藤琢磨は無傷だった。いっぽう、同じレースの第1ラウンドでは佐藤琢磨がポールポジションを獲得。なお、フォイトのチームが予選を制したのは1999年7月にアトランタ・モーター・スピードウェイでビリー・ボートが達成して以来のことである。いっぽう、佐藤琢磨がインディカー・シリーズでポールを獲得したのは、2011年のエドモントンを筆頭に、これが通算3回目となった。かつてチャンプカー・ワールドシリーズの舞台だったヒューストンでインディカー・シリーズが開催されたのは今回が初めてのこと。フォイト・レーシングでNo.14のマシーンに関わっている誰もが、このイベントを楽しみにしていた。「チームにとってはホームレースなので、とても楽しいイベントでした」と佐藤琢磨はコメント。「チャンプカーが開催された6年前のレースのビデオを見ましたが、非常に興味深いと思いました。クレージーなコースで、とてもバンピーなのに、速くて面白そうでした!」ただし、1ヶ所だけあまりにバンピーなところがあった。「今回はダブルヘッダーのイベントだったので、プラクティスは非常に短いものでした。いっぽう、他のカテゴリーでターン1のバンプが大きな問題となったので、速度を下げるための臨時シケインが設置されることになりました」「予選は土曜日に延期され、その間にバンプの整備を行ったので、シケインなしのコースに慣れるために10分間のウォームアップが設けられました」「金曜日のプラクティスは、ライドハイトやスプリングなど、ごく基本的な作業に取り組みましたが、大きな手応えを掴みました。そして土曜日の午前中にはとても古いタイアを装着して臨みましたが、マシーンは好調で、自信を抱くことができました」「メインストレートでは引き続き大きなバンプを避けなければならず、キンク部分のイン側を走ることになりました。それでも予選は最高に楽しかったですよ。僕たちは最初に硬めのブラックタイアでコースインし、ここでいいラップタイムを記録した後、レッドタイアに履き替えてポールポジションを獲得しました。この結果にはとても満足していますし、チームは素晴らしい仕事をしてくれたと思います。たくさんのチーム関係者と、腰の手術を終えて初めてサーキットに姿を見せたAJの前でこのような成績を収められたので、最高の気分でした」「いつもだったら、ポールを獲った後は一晩いい気分でいられますが、今回は記者会見を終えると、そのままレースの準備を始めなければいけませんでした」土曜日の午後には決勝のスタートが切られるのだから、忙しい思いをしたのは佐藤琢磨ひとりではなく、誰にとっても同じことだった。ただし、スタートラインでクラッシュが発生したために直ちに黄旗が提示され、この影響で佐藤琢磨は右リアタイアにパンクを負うことになる。「それほどいいスタートではありませんでしたが、トップを守ることはできました。ところが、先頭でこの事故現場に戻ってきたため、パーツの破片を拾ってしまったようです。エンジニアがラップごとに空気圧が下がっていることを伝えてくれたので、ピットストップをしないわけにはいきませんでした。これはとても辛いことでした」これで佐藤琢磨は12番手に後退。そしてリスタート以降は、トニー・カナーン、セバスチャン・ブールデ、マイク・コンウェイらと立て続けにバトルを演じることになる。「予選のときに比べると気温は大きく上がり、僕らはマシーンのスピードを失っていました。グリップは徐々に落ち始めていましたが、サイド・バイ・サイドのバトルがたくさんあったので、引き続きとてもエキサイティングでした。いっぽう、多くのドライバーが縁石に乗り上げて激しく跳ね飛び、コース上のホコリやマーブルに乗ってしまうような難しい状況でしたが、とにかく我慢のレースとなっていました」残念ながら、無線のトラブルによりチームと連絡をとれなかった佐藤琢磨には黒旗が提示され、ここでピットに戻ったマシーンをチームは修復することができた。この作業はあっという間に終わったが、佐藤琢磨はチームにハンドリングの症状を伝えるチャンスを逃してしまう。それでもレース戦略が的確だったこともあって、残り20周でリスタートを行ったときには8番手まで挽回していたが、フィニッシュまであと2周となったところで不運が襲いかかり、佐藤琢磨はウォールと接触することになる。「ジョセフ・ニューガーデンがターン1でイン側に飛び込んで僕をパスしていきましたが、このとき、彼はまったくスペースを残さなかったので、僕はシケインをショートカットすることになりました。これでタイアにはホコリがたくさんつきましたが、その後のターン3では3台が非常に接近して進入する形となります。僕のイン側にはジェイムズ・ジェイクスが飛び込んできました。僕はなんとかコーナーを曲がろうとしましたが、路面はとても滑りやすい状態になっていたため、一度ラインを外すともうどうすることもできず、僕はウォールに接触してしましました」「このときトーリンクにダメージを負いましたが、他のドライバーがリタイアすればポジションを上げることができるので、残り数周を走るためにレースに復帰しました」佐藤琢磨にとってはさらに悔しいことに、レース2の予選はキャンセルとなり、スターティンググリッドにはポイントランキング順に整列することとなった。ただし、エンジンをストールさせたダリオ・フランキッティと、チームのコミュニケーションが図れずに間違ったグリッドに並んだ琢磨のふたりは、最後尾からのスタートを余儀なくされた。「予選開始の10分前に雲行きが怪しくなってきたので、僕はヘルメットのなかで笑顔を浮かべていました。なにしろ、雨は大好きですからね! 僕は最終的にセッションがキャンセルされるまで、誰よりも長くコクピットのなかで待ち続けました」スタートとリスタートを完璧に決めた佐藤琢磨はぐんぐん順位を上げていき、レースが...
全文を読む