マクラーレン・レーシングのCEOザク・ブラウンは、2025年F1タイトル争いが激化するなかで、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリのどちらか一方を優先する考えを完全に否定した。レッドブルのマックス・フェルスタッペンが急速に差を詰めており、5戦前には104ポイントあったギャップがわずか36ポイントにまで縮まっているが、ブラウンは「もし負けるとしても、我々が自滅するのではなく、フェルスタッペンが我々を打ち負かす形であってほしい」と語った。
「もし彼(フェルスタッペン)が勝ったら、握手して『よくやった』と言うよ。大事なのは、我々がベストを尽くして、それでも相手が上回ったという結果になることだ」とブラウンはF1公式チャンネルの取材に答えた。2007年の悪夢を繰り返さないためにブラウンは、2007年にルイス・ハミルトンとフェルナンド・アロンソが同ポイントで終え、キミ・ライコネンにタイトルを奪われた苦い過去を引き合いに出した。「2007年のことはよく覚えている。2人が同点で、最後はもう1人に抜かれた。だが、我々は攻めの姿勢で戦っている。守ることはしない」と述べた。「もし今年また2人が同点で終わり、他のドライバーに1ポイント差で負けたとしても、それを受け入れる」「それよりも、シーズン途中で『君は夢を諦めろ。今季はタイトルを狙う権利がない』などと決めつけることの方が間違っている。」「チームのために最も良い方法は、ドライバーズ選手権で1位と2位を取ることだ。だから、両方のドライバーにタイトルを狙わせる。それがマクラーレンのやり方だ。」批判も意に介さず──「我々はレーサーだ」今季マクラーレンはチーム内の公平性をめぐり、外部からの批判を受けてきた。モンツァでは、ピアストリを先にピットインさせた後にノリスへポジションを譲らせる指示を出したが、ノリスがスローストップに見舞われた。また、シンガポールで両者が接触した際にはノリスに「一定の処分」を科したが、アメリカGPスプリントで再び接触が発生した後にその処分を撤回している。しかしブラウンは、そうした批判を気にする様子はない。「我々は自分たちのやるべきことに集中している。チーム、スポンサー、株主、そしてファンへの責任を果たすためにね。外の世界はすべての情報を知っているわけじゃない。」「ランドとオスカーの関係が良好なのは、どちらも平等なチャンスを持っているからだ」「我々は常に透明で、公平で、オープンにコミュニケーションを取っている。完璧ではないが、我々は“レーサー”だ。それを彼らも理解している。」「外の雑音はあるけれど、マクラーレン・テクノロジー・センターの中には絶対に持ち込まない。それが我々の哲学だ。」マクラーレンの戦略とF1タイトル構図の焦点ノリスとピアストリが1ポイント差でタイトル争いを繰り広げるなか、ブラウンが「どちらも勝たせる」と明言したことで、マクラーレンは事実上チームオーダーを封印した。これは短期的にはドライバー間の競争を活性化させるが、長期的にはチーム全体としての得点機会を危うくする可能性もある。特に今季のフェルスタッペンは、メキシコで投入された新フロア以降、わずか4戦で3勝と驚異的な巻き返しを見せており、マクラーレンの“二頭体制”が結果的にタイトルを逃すリスクも孕む。しかしブラウンが言うように、「マクラーレンはレーサーとして戦う」──その哲学が、2007年の再来を防ぐか、あるいは再び悲劇を呼ぶのか。今後の数戦は、チームとしての信念と結果のバランスが問われる正念場となる。
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