マクラーレンは、散々たるホンダの状況に忍耐が限界に近づいているようだ。エグゼクティブディレクターを務めるザク・ブラウンは、ホンダとの将来が“分岐点に差し掛かっている”と警笛を鳴らした。これまでどれだけ悲惨な状況にあってもホンダとの関係維持を強調してきたザク・ブラウンだが、ついてホンダの能力に“深刻な懸念”を抱いており、マクラーレンの経営陣がホンダとの関係解消を現実的なオプションとして検討していることを口にした。
ザク・ブラウンは、今週末のカナダGPで約束されていたエンジンアップグレードの準備ができていないことを最近になって伝えられたと述べ、ホンダがそれをいつ導入できるかも言うことができないことに不満を述べた。「ホンダはとても一生懸命に働いている。だが、彼らは少し道に迷っているようだ」とザク・ブラウンは Reuters にコメント。「我々は最近になって初めて(モントリオール)にアップグレードが入らないと伝えられた・・・我々には決定的なスケジュールがない。それは懸念だ。痛みは大きくなっているし、我々は永遠に無駄な時間を過ごすことはできない」「我々はこのアップグレードを心待ちにしていた。ドライバーもそうだ。それが入らないのは大きな失望だ。努力が足りないわけではない。だが、彼らはそれを仕上げることに苦労している」「ホンダとのワールドチャンピン獲得が達成可能なのか決断する必要がある」マクラーレンは、F1フェラーリに次いで2番目に古く、成功を収めているチームだ。まだ今シーズンはまだポイントを獲得できていない唯一のチームであり、2012年以降、レース優勝から遠ざかっている。2015年の“マクラーレン・ホンダ”の復活は、1980年代後半から1990年代前半にアイルトン・セナとアラン・プロストによる黄金時代を観てきたファンに大きな期待を抱かせた。だが、特にホンダがF1パワーユニットを一新して挑んだ今年のマクラーレン・ホンダは、レースを完走できないだけでなく、ホンダのエンジン故障によって、レースのスタートさえ切れない最悪の状況に陥っている。コンストラクターズ選手権で、マクラーレン・ホンダは2015年を9位、2016年を6位で終えているが、今シーズンはチーム史上最悪の結果をもたらす可能性がある。「執行委員会は我々に直ちに進軍命令を下した」とザク・ブラウンはコメント。「我々は希望を抱いてこのようなシーズンをもう一年過ごすつもりはない」マクラーレンは、まだホンダとチャンピオンシップを制することを望んでいるが、それが達成可能なことなのかどうかに大きな懸念を抱いているとザク・ブラウンは語る。「我々がオプションがどのようなものかを詳しく語りたくはない。我々の優先はホンダとワールドチャンピンを獲得することだ。だが、どこかの時点でそれが達成可能なのかどうかを決断する必要がある。我々は深刻な懸念を抱いている」「アップグレードを逃し、彼らが投入すると話していたレベルのアップグレードも届いてない。そう長くは耐えられない。限界に近づいている」「カスタマーエンジンでもチャンピオン獲得は可能」プレシーズンテストでは、マクラーレンはエンジン供給の可能性についてメルセデスに打診したと報じられた。マクラーレン・ホンダのドライバーを務めるフェルナンド・アロンソは、3月の時点で「唯一の問題はパワーユニットだ。信頼性もパワーもない」とホンダのF1エンジンを酷評。契約が切れる今シーズン以降のチーム離脱を示唆している。ザク・ブラウンは、2018年の新車の計画を立て、フェルナンド・アロンソに残留を納得させるための理由を与えるために今後90日間で大きな決断を下すことになると述べた。「全てはいずれまとまる。決定に関係する多くのことがある。我々はもう“分岐点に差し掛かったときにどちらに進もうか”というウィンドウに入っている」ザク・ブラウンの前任者ロン・デニスはタイトルを獲得するためには“ワークス”エンジンが必要だとし、ホンダとのパートナーシップを決断した。ザク・ブラウンは、ホンダとパートナーシップを結ぶという決定は“100%正しかった”としつつも「だが、これまでそれはうまくいかなった」と続けた。「F1における1年は永遠だ。3年は10年に値する。永遠に続けることはできない」ザク・ブラウンは、“ワークス”パートナーシップにははっきりとした利点があるが、“カスタマー”チームもタイトルを獲得できるとし、例としてレッドブルと2008年のブラウンGPを挙げた。「カスタマーエンジンでも勝てると思うか? 可能だと思う」とザク・ブラウンは述べた。報道では、ホンダは年間1億ドル以上の予算をマクラーレンに投じているされており、マクラーレンはそれらの金額を失う余裕はないのではないかと疑念が持たれている。しかし、ザク・ブラウンは、マクラーレンがこの3年間で大口の長期的なスポンサー、重要な賞金を失っていると述べた。「FOMの賞金とスポンサー喪失による損失の影響を見れば、ホンダがもたらしている商業的な利益は減ってきている。それを差し引けば、外部から見えるような商業的な利益はあまりない」