ホンダは、2026年F1シーズンから新たなワークスパートナーとしてアストンマーティンと本格的な挑戦をスタートさせる。その最前線に立つのが、HRC F1トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎だ。2003年に本田技術研究所へ入社して以来、量産車開発からF1の最前線まで、20年以上にわたりホンダのエンジン開発を支えてきた折原。2026年からは、サーキット現場におけるパワーユニット運用の最終責任者として、新時代のF1に臨む。
ホンダ入社の原点はF1だった折原がホンダを志した原点は、中学生時代にテレビで見たF1だったという。「テレビでF1を見ていて、特に際立っていたのがHondaエンジンを搭載したマクラーレンのマシンでした。その瞬間から、ホンダに入り、この素晴らしいスポーツの一部になりたいと思うようになりました」2003年に入社後、最初の10年間は量産車プロジェクトに従事。それでもF1への情熱は消えることはなかった。「F1への愛と情熱は消えることなく、努力が実を結びました。2013年にレース部門へ異動し、夢を叶えることができたのです」F1エンジニアとしての道のりは、決して平坦ではなかった。「激しい逆境の時も経験しましたが、最終的には栄光の思い出や素晴らしい時間を過ごすことができました。ホンダとF1は、私の人生の一部であると自信を持って言えます」トラックサイド・ゼネラルマネージャーとしての役割2026年、折原はHRC F1トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアとしてサーキットに立つ。「最終的には、サーキットにおけるパワーユニットに関する最終決定を下すことが私の役割です」現場では、Honda Racing Corporationの全トラックサイドメンバーを統括し、パワーユニットの準備状況を管理する。レースウイーク前には、日本のさくらの施設にいる同僚と入念な打ち合わせを行う。「レースに向けて出発する前に、一連の会議を行い、状況確認とイベントに向けた計画を立てます。週の初めに移動し、サーキット到着時にはメンテナンス後のエンジン状態を確認します」現地では、エンジニアとともに週末の計画を微調整し、コンディションに応じた選択肢やシナリオを評価する。「その後、アストンマーティン・アラムコF1のエンジニアとミーティングを行い、細部に至るまで確認し合い、完全な統合を図ります」セッション中は、パワーユニットの操作自体は他のホンダスタッフが担当し、折原は全体を俯瞰する立場に立つ。「私が判断を下し、無線を通じてチームとコミュニケーションを取ります」一日の終わりには、現場と日本のコントロールルームをつないだ内部のパワーユニットミーティングを実施する。「何が起きたかを振り返り、問題が発生した場合は対策を講じます。その後、チームに報告・協議し、認識の統一を図ります」アストンマーティンとの最初の“実戦の年”アストンマーティン・アラムコF1との関係について、折原は2026年を「本当の意味でのスタートの年」と位置づける。「2026年は、私たちがサーキットでアストンマーティン・アラムコと共に学ぶ最初の年です。パートナーシップは2023年に発表されましたが、これまではすべて理論とシミュレーションに基づいて進められてきました」そのため、実走テストへの期待は大きい。「第一の目標は、現場における両者の基礎的な関係を構築することです。そして第二に、走行距離を重ねてデータを収集し、RA626HパワーユニットがAMR26という車体でどのように機能するかを理解することです」バーレーン公式テストへの思いバーレーンで行われるF1公式プレシーズンテストを前に、折原は率直な心境を明かす。「正直なところ、待ち遠しかったです。長年の開発と努力が、ここで結実するのですから」日本のさくらの施設、HRC UK、そしてアストンマーティン・アラムコF1。それぞれの拠点が一体となり、準備を重ねてきた。「バルセロナでのシェイクダウンは、私たちの関係における極めて重要な瞬間であり、正しい方向への大きな一歩となりました」次に見据えるのは、信頼性と実走データの積み重ねだ。「我々のパワーユニットで走行距離を重ね、エンジンの信頼性を確認し、すべての機能をチェックすることが次の目標です。車体とパワーユニットがひとつのマシンとして、どのような挙動を見せるかを楽しみにしています」折原伸太郎 キャリア概要■ 2003年本田技術研究所(栃木)入社。四輪エンジンベンチテストエンジニア■ 2013年HRD F1プロジェクト(さくら)、ベンチテストエンジニア■ 2014年HRD F1プロジェクト(ミルトンキーンズ)、PUファクトリーマネージャー■ 2018年HRC F1プロジェクト(さくら)、PUテストチームリーダー■ 2022年ホンダ・レーシング(さくら)、テストチームリーダー■ 2023年ホンダ・レーシング(F1活動)、PUチーフエンジニア■ 2025年ホンダ・レーシング、F1トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア
全文を読む