FIA(国際自動車連盟)が、フェラーリとレッドブル・レーシングが採用する革新的なリヤウイング「マカレナ・ウイング」の安全性について調査を開始した。きっかけとなったのは、F1イギリスGP決勝でマックス・フェルスタッペンがリヤウイングのトラブルによってクラッシュした一件だ。FIAは両チームの技術責任者と協議を進めており、必要と判断すれば追加の安全対策や設計変更、さらには将来的な禁止措置も視野に入れている。
フェルスタッペンのクラッシュがFIAを動かす今回の調査の発端となったのは、シルバーストンでのフェルスタッペンのクラッシュだった。レース終盤、ストウ・コーナーで突然マシンの挙動を乱したフェルスタッペンはグラベルに飛び出してリタイア。原因の詳細は公表されていないが、リヤウイングの不具合が関係していることが判明している。フェルスタッペンは、そのわずか1週間前のオーストリアGP予選でも、空力の気流再付着(エアフロー・リアタッチメント)の問題によって最終コーナーでコースアウトしており、短期間で2度続いたトラブルに強い危機感を示した。「本当に危険だった。ケガをしていてもおかしくなかった。オーストリアでも今回も運が良かっただけだ。だから腹が立つんだ」この発言を受け、FIAは安全面から状況を精査する必要があると判断した。「マカレナ・ウイング」とは何か問題となっているのは、パドックで「マカレナ・ウイング」と呼ばれる新世代リヤウイングだ。従来型DRSとは異なり、上部フラップが大きく回転する構造となっており、フェラーリでは直線モードに入る際に約225度も時計回りに回転するとみられている。この大胆な動きによって空気抵抗を大幅に低減し、さらにごくわずかな揚力を発生させることで転がり抵抗まで減らすことを狙っている。現在このコンセプトを実戦投入しているのはフェラーリとレッドブルのみで、他チームよりも積極的な可動機構を採用している。レッドブルは従来型への回帰も検討レッドブル代表ローラン・メキースは、ベルギーGPまでに原因究明を進め、安全性を最優先すると説明した。「安全面についてはあらゆる可能性を検証する。必要であれば、どんな対応でも行う」レッドブルはこの可動式リヤウイングをマイアミGPから使用している。そのため、今回の問題がウイング設計そのものによるものなのか、それとも別要因なのかを慎重に分析している段階だという。原因を完全に特定できなければ、シーズン序盤まで使用していた従来型リヤウイングへ戻す可能性も排除していない。FIAはフェラーリにも説明を求める今回の調査はレッドブルだけが対象ではない。FIAは同じコンセプトを採用するフェラーリとも技術協議を進めており、可動式リヤウイング全体の安全性を再評価している。両チームの設計は事前にFIAの承認を受けており、導入時点で安全性の確認も行われている。現在の技術規則では、リヤウイングはストレートモードからコーナーモードへ400ミリ秒以内に切り替わらなければならず、さらにシステムに異常が発生した場合は、自動的にコーナーモードへ戻る「フェイルセーフ設計」が義務付けられている。今回の協議では、これらの安全機能が実戦環境でも十分に機能しているかが重点的に確認されている。禁止措置に発展する可能性もFIAが安全性に十分な保証を得られない場合、チームに追加の安全対策を義務付ける可能性がある。例えば、機械的なバックアップ機構の追加や、コーナー進入時の作動ロジック変更などが選択肢として考えられる。さらに踏み込めば、このタイプのリヤウイング自体を安全上の理由から禁止する可能性もある。マクラーレンを含む他チームも低ドラッグ型リヤウイングの開発を進めており、このコンセプトは今後さらに普及するとみられる。そのため、FIAが早い段階で一定の方向性を示す可能性もある。技術規則第C1.2条では、危険と判断された部品を装着したマシンについて、スチュワードは即時に参戦を禁止できる権限を持つことも定められている。フェラーリでは大きな問題は発生せず一方、フェラーリでは同様のトラブルは発生していない。このリヤウイングはプレシーズンテストで初登場し、中国GPではフリー走行で使用されたものの、万全を期してレース投入は見送られた。その後、マイアミGPから本格投入されて以降は継続使用されているが、これまで重大な不具合は報告されていない。今回のFIAの調査は、レッドブルの連続トラブルをきっかけとしながらも、今後普及が見込まれる可動式リヤウイング全体の安全基準を見直す重要なケースとなりそうだ。Source: The Race