フェラーリF1内部で、モナコGPの週末を通じて大きな話題となったのがブレーキの問題だった。発端はカナダGPまでさかのぼる。シャルル・ルクレールは週末を通じてブレーキのフィーリングに不満を訴え続け、タイヤ温度との関連性についても言及していた。低温かつ低グリップの路面だったモントリオールでは、その傾向が特に顕著だった一方、チームメイトのルイス・ハミルトンは比較的快適に走行していた。
そして母国レースのモナコでも、ルクレールの不満は解消されなかった。ルクレール「解決策はあるが試さなかった」予選後、ルクレールはブレーキに関する問題について次のように語っていた。「解決策があることは分かっている。ただ、ここモナコでは試したくなかった」しかし決勝では再びブレーキのフィーリングに苦しみ、レース中の接触後には無線で感情を爆発させた。「この件の責任を僕は負わない。原因はこの忌々しいブレーキだ」レース後もその主張は変わらなかった。さらにルクレールは、ハミルトンがすでに別仕様のブレーキを使用していることを明かした。「ルイスは3レース前から違うブレーキを使っている。僕も次のレースから使うことになると思う」ただし、その詳細については明言を避けていた。ハミルトンは日本GPから別仕様を採用AutoRacerによると、ハミルトンは2026年F1日本GPから自身が好むブレーキ仕様へ変更していたという。フェラーリのブレーキシステムは基本的にブレンボ製だが、ハミルトンのマシンではブレンボ製キャリパーを維持しながら、ブレーキディスクのみをカーボン・インダストリーズ製へ変更したとされる。これはハミルトンがメルセデス時代に長年使用してきたメーカーであり、フェラーリ移籍によって一度離れていた仕様だった。重要なのは、ブレーキシステム全体を変更したわけではないという点だ。現在も44号車の大部分はブレンボ製コンポーネントが使用されており、変更されたのはディスク部分のみとみられている。メルセデス時代から続いていたハミルトンの要望実はこの変更は突然決まったものではない。ハミルトンはメルセデス在籍時代の2025年シーズンから、カーボン・インダストリーズ製ディスクへの強い信頼を示していた。問題は性能そのものではなく、長年使い続けてきたことで身についたフィーリングだった。フェラーリは50年以上続くブレンボとの関係を重視し、従来仕様を維持していたが、ハミルトンは移籍後も変更を求め続けた。2026年プレシーズンテストのバーレーンで評価が行われ、その後チームを説得することに成功。日本GPから事実上の仕様変更が実施されたという。フェラーリは2人のドライバーで異なる方向を選択モナコGP終了後の発言から見えてくるのは、フェラーリが現在2人のドライバーに異なるブレーキ仕様を提供しているという事実だ。ハミルトンは自身が慣れ親しんだ構成へ回帰し、一定の満足感を得ている。一方でルクレールは、カナダGPから続くフィーリング不足に苦しみ続けている。モナコGP後のコメントを見る限り、フェラーリは近いうちにルクレールにも同様の仕様を試させる可能性が高い。母国レース後に飛び出した「ルイスと同じブレーキを使う」という発言は、単なる感情的な不満ではなく、フェラーリ内部で進行している技術的な方向転換を示唆するものだったのかもしれない。【関連】・ルクレールの“原因はブレーキ”発言にブレンボが反論 フェラーリF1に新たな火種