アイルトン・セナがF1デビューを飾ったマシン「トールマンTG183B」が、2026年4月にモナコで開催されるRMサザビーズのオークションに出品される。F1史における最重要級の“起点”ともいえる1台であり、コレクター市場でも大きな注目を集めている。このマシンはセナのキャリアの出発点となった実車であり、1984年シーズン序盤の4戦で使用されたシャシー「TG183B-05」。推定落札価格は280万〜380万ユーロとされているが、その歴史的価値からさらなる高騰も予想されている。
セナのF1キャリアの原点となった1台アイルトン・セナは1984年、トールマンからF1デビューを果たした。このTG183Bはすでに旧型となりつつあったマシンだったが、セナはその中で強烈な才能を示していく。デビュー戦のブラジルGPではターボトラブルでリタイアに終わったものの、続く南アフリカとベルギーで連続6位入賞を記録。サンマリノでは予選落ちを喫したものの、わずか4戦でそのポテンシャルの片鱗を見せつけた。このマシンは、セナがF1での161戦のキャリアをスタートさせた“原点”であり、まさに伝説の第一歩となった1台である。トールマンとターボ時代の象徴的マシントールマンTG183Bは1982年に登場し、1983年シーズンを通して使用された後、1984年序盤まで継続投入されたマシンだ。当時のF1はターボ時代の真っただ中にあり、1.5リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載。予選では1000馬力級、決勝でも800馬力以上に達する一方、車重は600kg未満という過激なパッケージだった。カーボンファイバー製モノコックに加え、前後ダブルウィッシュボーンのサスペンションを採用。特徴的なリアウイング設計やフロントウイング内蔵ラジエーターなど、当時ならではの独創的な空力思想も見られるマシンだった。現在も走行可能な“生きた遺産”今回出品されるTG183B-05は、現在も走行可能な状態にレストアされており、FIA公認のヒストリックレースにも出場可能なコンディションを維持している。また、当時のオリジナルパーツも多く残されており、セナが実際に使用した木製のシフトレバーも現存。さらにフットレストには「Ayrton」ではなく「Aryton」と誤記されたままの表記が残るなど、極めて貴重なディテールも保存されている。2017年にイギリスのオーナーの手に渡った後、ドキュメンタリー出演や記念イベントにも登場しており、その存在は単なる展示物ではなく“動く歴史”として受け継がれてきた。セナの伝説とともに価値を高め続ける存在セナはその後、ロータス、マクラーレンで成功を収め、3度のワールドチャンピオンに輝いた。特に1988年からのマクラーレン時代には黄金期を築き、F1史に名を刻む存在となった。1994年のサンマリノGPで命を落とした後も、その影響力と人気は衰えることなく、今なお世界中で“史上最高のドライバーの一人”として語り継がれている。そのキャリアのすべてが始まったこのTG183Bは、単なるクラシックカーではなく、モータースポーツ史そのものを体現する存在だ。今回のオークションは、その歴史を手にするまたとない機会となる。
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