2026年から導入されたF1新レギュレーションで、アストンマーティンとのワークス体制をスタートさせたホンダ。しかし、シーズン序盤はパフォーマンス不足や信頼性トラブルに苦しみ、期待された船出とはならなかった。ホンダF1のトラックサイドマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原慎太郎が『Autosport』の独占インタビューで、問題の深刻さを本格的に認識したのは2026年1月だったことを明かした。
なぜ開発段階では見抜けなかったのか、その経緯と現在の改善状況を説明している。昨年末は「問題ない」と判断も 1月に状況が一変2026年に向けた新世代パワーユニットの開発は、2025年末の時点では順調に見えていたという。折原慎太郎は、当初の状況について次のように振り返った。「おそらく昨年末の時点では、それほど悪い状況ではありませんでした。性能やドライバビリティはまだ開発段階でしたが、見た限りでは問題ないように思えました」しかし、年が明けた2026年1月になると状況は急変した。「1月になって、一部の領域で問題というより、性能が上がったり下がったりを繰り返していることが分かりました。性能向上が見つかっても、同時に信頼性の問題も見つかるという状態でした」ホンダは信頼性を最優先したため、得られた性能向上の一部をあえて後退させざるを得なくなり、その結果として開発スピードも鈍化した。「1月の段階で、自分たちの性能と信頼性では競争力がないと認識しました。バルセロナで走り始めると、他メーカーと比べて性能面で明らかに劣っていることが分かりました。また、バッテリー側にも問題が見つかりました」バッテリートラブルで貴重なテスト時間も失うバッテリー関連の不具合は、冬季テストにも大きな影響を与えた。アストンマーティンとホンダはライバルとの差を縮めるため、多くの走行データを必要としていたが、トラブルによってその機会を失うことになった。「今年の初めには、自分たちが良い状況ではないことを認識していました。昨年末の段階でも競争力不足は感じていましたが、ここまで深刻だとは予想していませんでした」最大の課題は「すべてが同時に変わったこと」折原慎太郎によれば、今回の苦戦には単一の原因があるわけではない。2026年レギュレーションでは、パワーユニットのあらゆる要素が一斉に変更されており、その複雑さが最大の課題になっているという。「どのコンポーネントが最も難しいかを一つ挙げるのは難しいです。今回のレギュレーションでは、すべてが大きく変わりました」「例えばMGU-Kは約120kWから350kWへと大幅に出力が増えました。それだけでも非常に大きな変化です」「さらに内燃エンジン側でも燃料流量が変更されています。つまり、すべてが大きく変わったこと、その組み合わせこそがホンダにとって最大の難しさでした」現在のホンダ製パワーユニットは内燃エンジンの出力不足が大きな課題となっており、ザントフォールトで投入予定のアップグレードは、この弱点を改善することを主目的としている。MGU-H廃止がドライバビリティに大きく影響一方、電動系では効率向上だけでなく、ドライバビリティの改善も重要なテーマとなっている。折原慎太郎は、その大きな要因としてMGU-H廃止を挙げた。「MGU-Hがなくなったことも、パワーユニットメーカーにとって非常に大きな課題です」「これはパワーユニットメーカーにとって最も興味深いポイントかもしれません。私がこれまで何度も話してきたドライバビリティですが、その大部分はMGU-Hがなくなったことに起因しています」「目標とする過給圧を維持することが、パワーユニットサプライヤーとして非常に難しくなりました。どれか一つの部品が最大の課題というより、やはりすべての変更が同時に起きたことが最大の難しさでした」ザントフォールトで反撃開始へホンダは競争力を完全に取り戻すには時間がかかると認めているが、その第一歩としてザントフォールトで新仕様エンジンを投入する予定だ。このアップグレードは内燃エンジン性能の改善に特化したもので、すでにハンガロリンクで実施されたフィルミングデーで初走行を終えている。開発責任者自らが明かした今回の証言からは、ホンダが苦戦した理由は単なる設計ミスではなく、新レギュレーションでパワーユニット全体の設計思想が一変したことにあったことが浮き彫りになった。ザントフォールトでのアップグレードが、その巻き返しの第一歩となるか注目される。
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