ウィリアムズF1 開発遅れの深刻な実情「他チームにはない問題に予算」

ジェームス・ボウルズ代表は、現在もコストキャップ下の貴重なリソースを「他チームには存在しない問題」の解決に振り向けていると明かした。
2025年のコンストラクターズ選手権を5位で終えたウィリアムズは、新テクニカルレギュレーションが導入された2026年にさらなる前進を狙っていた。しかし、FW48は完成が遅れ、プレシーズンのバルセロナで行われたシェイクダウンを欠席。開幕後も重量超過とダウンフォース不足に苦しみ、現在はコンストラクターズ選手権9位に沈んでいる。
FW48は「推測」に頼って開発
問題は、FW48が完成する以前から始まっていた。
ボウルズによれば、ウィリアムズが必要としていた新しいシミュレーション技術は2025年初頭にはまだ利用できず、実際に稼働したのは同年11月だった。そのころには2026年型FW48の設計はほぼ完成していた。
「我々がやっていたのは、知識と経験に基づいて推測することだった。そして、その一部を間違えた」
ボウルズはザントフォールトでそう認めた。
その代表的な例が、空力開発で基準としたリアのライドハイトだった。
「我々は間違ったリアのライドハイトで開発を進めた。ちなみにアストンマーティンも同じだった。それほど大きな違いには聞こえないかもしれないが、空力的には完全に間違った領域で開発していることになる」
現在のF1マシンでは、フロア下面で発生させるダウンフォースが性能を大きく左右する。そのため、マシンがどの車高領域で走ることを前提に空力開発を行うかは重要だ。
FW48はフロントランナーと比較してリアの車高が高いハイレーキ傾向のマシンとなっており、Autosportはアストンマーティンとともにその特徴が目立っていると指摘している。
マイアミでようやく「開幕戦仕様」
設計上の問題だけではなかった。FW48の最終的な製造ではクラッシュテストへの対応にも問題が発生し、チームはバルセロナでのシェイクダウン参加を断念した。
完成したマシンは重量超過の状態で、ダウンフォースも不足していた。
その遅れがどれほど大きかったのかを示すのが、ボウルズが明かしたマイアミGPでの状況だ。
「我々はかなり率直に話している。マイアミで走らせたマシンは、実際にはメルボルンに持っていく予定だったマシンだった」
5月に行われた第4戦マイアミGPで投入したFW48が、チームが本来3月の開幕戦オーストラリアGPで走らせる予定だった仕様だったという。
つまり、ウィリアムズはシーズンが始まってからもしばらくの間、当初予定していた開幕仕様に追いつくための作業を続けていたことになる。
さらに、FW48は重量超過でスタートしたため、通常ならダウンフォース向上に振り向ける開発リソースの多くを軽量化に使わざるを得なかった。
Autosportによれば、バクーで開催されるアゼルバイジャンGPに投入予定のアップグレードが、ウィリアムズにとって2026年で初めて本格的に空力性能向上を目的として開発されたパッケージになる。
ライバルがシーズン中に継続して空力アップデートを投入するなか、ウィリアムズはまず開幕時の遅れと重量問題を取り戻すことに追われてきた。

「他チームにはない問題」を修正
こうした状況の根底にあるのが、ウィリアムズが長年抱えてきたインフラの問題だ。
ボウルズは2023年にメルセデスからウィリアムズに加入して以来、グローブの設計・製造設備や業務プロセスの近代化を進めている。しかし、約20年間にわたる投資不足によって生じた差を短期間で埋めることはできないと説明する。
「ウィリアムズを12カ月で直すことはできない」
さらに、現在のF1ではコストキャップが設定されているため、チームが使えるリソースには限界がある。
「今、我々はコストキャップの予算のかなりの部分を、他チームには存在しない問題を修正するために使っている」
これは現在のウィリアムズが抱える大きなジレンマでもある。
上位チームが利用可能な予算を現在のマシンのパフォーマンス向上に集中できる一方、ウィリアムズは同じコストキャップの枠内で、過去の投資不足によって残された設計、製造、シミュレーションなどの問題も解決しなければならない。
ボウルズは以前から、チームの一部システムがF1のトップチームと比較して大幅に遅れていることを明らかにしてきた。現在進めている改革も、目先の数戦だけではなく今後5年間を見据えたものだという。
マクラーレンから生産部門のキーパーソンを獲得
その改革を加速させるため、ウィリアムズは8月、マクラーレンで最高執行責任者(COO)を務めていたピアーズ・シンを迎え入れた。
シンはグローブで、生産プロセスの効率化や計画、施設の近代化を中心に担当する。
ボウルズは、マクラーレンでF1のトップレベルの組織を経験してきたシンについて、チャンピオンシップを争うチームがどのような水準で機能するべきかを理解していることが大きな財産になると評価している。
2025年にコンストラクターズ選手権5位まで浮上したウィリアムズだが、2026年は新規則への対応で再び後退した。FW48そのものを速くする作業と並行して、将来のマシンをより速く、より効率的に開発できる組織へと作り替える必要がある。
現在の開発の遅さはその改革に伴う代償でもある。バクーに予定される本格的な空力アップデートがFW48の競争力をどこまで引き上げられるかとともに、ウィリアムズが長年のインフラ面の遅れをどれだけ早く解消できるかが、再び上位へ返り咲くための鍵となる。
カテゴリー: F1 / ウィリアムズ・レーシング
