F1 2027年は高デグタイヤ導入へ 1ストップ偏重の解消を目指す
F1は2027年シーズンに向け、タイヤのデグラデーション(性能劣化)を意図的に高める方向で開発を進めている。狙いは、F1アゼルバイジャンGPのような1ストップ戦略が主流となるレースを減らし、戦略の幅を広げることにある。
2026年はF1ハンガリーGPのようにタイヤ摩耗が大きく、ランド・ノリスが3回のピットストップを行って優勝したレースもあった。
一方で、多くのサーキットでは1ストップ戦略が有利となっている。今季ここまで15戦のうち9戦では、優勝者を含む大半のドライバーが1ストップでレースを走り切っている。
2026年タイヤ開発で直面した難題
こうした状況には、2026年用タイヤが開発された際の特殊な事情も影響している。
ピレリは2026年型F1マシンが実際に完成する前からタイヤを開発する必要があり、各チームが提供したダウンフォースやタイヤ負荷に関するシミュレーションデータを基に作業を進めていた。
しかし、各チームの予測には大きなばらつきがあった。昨年8月に明らかになったところでは、チーム間のダウンフォース予測には最大30%もの差があり、ラップタイムに換算すると約4秒の違いに相当していた。
そのためピレリは、その幅広い性能レンジすべてに対応できるタイヤを用意する必要があった。
開発当時、実際の2026年型F1マシンはまだ存在していなかった。ピレリが使用できた最も近いものは、各チームが提供した「ミュールカー」だった。これらには基本的な2026年仕様の空力特性が再現されていたものの、2026年型パワーユニットは搭載されておらず、新世代PU特有の特性までは再現できていなかった。
2027年タイヤは現行F1マシンで実走テスト
これに対し、2027年用タイヤについては、各F1チームが2026年型マシンとパワーユニットを使用し、ピレリ専用テストで実際に走行させることが可能になっている。
直近では、F1スペインGP後にイモラでフェラーリとレーシングブルズが2027年用タイヤのテストを実施した。
フェラーリからはルイス・ハミルトン、シャルル・ルクレール、アントニオ・ジョビナッツィ、レーシングブルズからはリアム・ローソンとアービッド・リンドブラッドが参加。両チーム合わせて400周を走行し、2027年に向けたタイヤ開発を進めた。
その2027年用タイヤでは、現在よりも高いレベルのデグラデーションを発生させることが開発目標のひとつとなっている。

ピレリ「より大きなデグラデーションを生み出す」
ピレリのチーフエンジニアを務めるシモーネ・ベッラは、2026年型の実車を使用できることがタイヤ開発に大きなメリットをもたらしていると説明した。
「今年はミュールカーではなく、今年の実際のマシンを使って作業することができた。そのため、我々にとっては状況をより明確に把握することができた」
「そして、我々の目標はマシンのバランスや安定性そのものにはそれほど関係していなかった。より大きなデグラデーションを生み出すことに重点を置いていた」
そのためピレリは、タイヤの構造そのものにも手を加えているという。
「より大きなデグラデーションを発生させるため、構造について作業を行った。フロントタイヤでより大きなデグラデーションを発生させるためのさまざまなソリューションを確認し、リアアクスル側でより大きなデグラデーションを生み出す別のソリューションについても確認した」
「現時点では、これらのソリューションについてあまり詳細には話したくない。ただ、考え方としては性能低下のレベルを高めるということだ。特にシーズン前半、そしてその他のレースでも、性能低下がかなり小さいことが確認されていたからだ」
発熱量を増やして熱による性能低下を促進
ピレリが取り組んでいるポイントのひとつが、タイヤ内部で発生する熱を増加させることだ。これによって熱による性能低下をより大きくし、スティントを重ねるにつれてラップタイムが落ちていく特性を強めることを狙っている。
「我々は構造そのものに取り組み、より多くの熱を発生させ、熱による性能低下を大きくすることを目指した」
ただし、2027年用タイヤの最終的な特性がすでに決定したわけではない。今後はコンパウンドについてもテストを進め、来季に使用するレンジを確定する必要がある。
「もちろん、コンパウンドレンジについてはまだテストが残っており、来シーズンに向けてコンパウンドレンジを決定しなければならない。したがって、これも今回の議論で考慮しなければならない別のテーマだ」
次回テストはマニクールでウエットタイヤを評価
ピレリによる次回の2027年用F1タイヤテストは、10月中旬にフランスのマニクール・サーキットで実施される予定となっている。
マニクールに設置されている人工散水システムを使用し、2027年シーズンに向けたウエットタイヤのテストが行われる予定だ。
2026年はここまで1ストップ戦略が主流となるレースが多かったが、ピレリは実際の現行F1マシンから得られるデータを活用し、2027年にはより明確なデグラデーションを持つタイヤを目指している。構造とコンパウンドの両面で狙い通りの特性を実現できれば、複数回のピットストップを選択するレースが増え、戦略面にも変化が生まれる可能性がある。











