MotoGPがF1型「予算上限」を検討 エスペレータ「削減の余地は大きい」

F1では2021年からコストキャップが導入され、マシンの設計・開発やスタッフの給与など幅広い支出が制限されている。
MotoGPでは現時点で資金力と成績が単純に比例しているわけではないものの、エスペレータはメーカーの持続可能性を高めるという別の観点から、支出に上限を設ける価値があると考えている。
MotoGPが予算上限を検討
MotoGPでは現在、2027年から導入される新テクニカルレギュレーションに向けて大きな変革が進められている。そのなかで、競技面だけでなく財務面についてもF1の仕組みを参考にする可能性が浮上した。
カルロス・エスペレータは、メーカーごとに企業としての成り立ちや組織構造が異なるため、MotoGPで統一された予算上限を設定するのは簡単ではないと説明する。
「非常に野心的な目標だ。MotoGPのコンストラクターは、それぞれ異なる企業や背景を持ち、組織のされ方も違う」
「検討する必要がある。ただ、やろうという意思があれば方法はある」
F1では2021年に年間予算の上限が導入された。対象にはマシンの設計や性能開発、スタッフの給与などが含まれる一方、ドライバーの給与、最も高額な報酬を受け取る上位3人のスタッフ、マーケティング費用、移動費などは除外されている。
各チームの支出はFIAによる財務監査を通じてチェックされており、巨額の開発費を投入し続ける競争を抑制する仕組みとなっている。
こうした制度は、既存チームの財務状況を改善するだけでなく、新規メーカーや企業がF1に参入しやすい環境を生み出した要因のひとつとも評価されている。
MotoGPでは「お金を使えば勝てる」状況ではない
ただし、MotoGPとF1では事情が異なる。
F1でコストキャップが導入された大きな目的のひとつは、チーム間の圧倒的な資金力の差がそのまま競争力の差につながる構造を緩和することだった。
一方、MotoGPでは必ずしも最大規模の予算を投入するメーカーが最も高い競争力を発揮しているわけではない。2026年シーズンにはアプリリアが大手メーカーを上回るパフォーマンスを見せるなど、予算規模だけでは説明できない勢力図となっている。
エスペレータも、現在のMotoGPにはコース上の競争を改善するために予算上限が必要なわけではないと強調した。
「必要なのは別の理由からだ」
「コース上に問題があるわけではない。そこは強調しておくことが非常に重要だ」
「今も、いくつかのメーカーが、より大きな予算を持つメーカーを上回っているのを見ていると思う」
つまり、MotoGPが検討する予算上限は、メーカー間のパフォーマンスを人工的に均衡させることだけを目的としたものではない。
メーカーの支出削減に「大きな余地」
エスペレータが重視しているのは、MotoGPへの参戦を長期的に持続可能なものにすることだ。
最高峰クラスへの参戦には、マシン開発だけでなく、テストチーム、人員、設備、物流など多額の費用が必要となる。技術競争が激しくなれば、メーカーはライバルに遅れないために支出を増やさざるを得なくなる。
そのため、競争力に直接的な問題が生じていなくても、一定の財務規制を設けることでメーカーの負担を軽減できる可能性がある。
「重要なのは、なぜこれを行うのか、そしてどのように行うのかという合理的な理由を構築することだと思う」
「我々の前にはチャンスがある。いくつかのメーカーには、予算を削減できるかなり大きな余地があると考えている」
MotoGP側としては、単純に「F1が導入して成功したから」という理由で制度をコピーするのではなく、二輪最高峰カテゴリーに適した目的と仕組みを明確にする必要があるという考えだ。
ギュンター・シュタイナーも予算上限を支持
F1でコストキャップを経験した人物からも、MotoGPへの導入を支持する声が上がっている。
元ハースF1チーム代表で、現在はテック3 KTMを率いるギュンター・シュタイナーは、MotoGPのコスト削減策として予算上限が有効だと以前から主張している。
シュタイナーは、コスト削減を目的として1台体制を導入する案に反対した際、より直接的な解決策として予算上限を挙げていた。
「お金を節約したいのであれば、非常に簡単な解決策がある。予算上限だ」
「それがどこで非常にうまく機能したかは、みんな知っている。F1だ」
F1の財務規則を熟知するシュタイナーにとって、参戦台数や競技そのものを縮小してコストを削減するより、使用できる予算そのものに制限を設ける方が合理的という考えだ。
MotoGP独自の制度設計が最大の課題
もっとも、実際にMotoGPで予算上限を導入する場合には多くの課題が残されている。
F1では基本的に各チームが独立したレーシング組織として運営されているが、MotoGPに参戦するメーカーはロードバイクの研究開発や生産部門など巨大な企業活動の一部としてレース部門を抱えているケースが多い。
MotoGP向けの研究開発費と市販車向けの研究開発費をどこまで区別するのか、ファクトリーとサテライトチームの支出をどのように扱うのか、メーカーごとに異なる組織構造をどう公平に監査するのかなど、制度設計には複雑な問題が伴う。
それでもエスペレータは「意思があれば方法はある」として、実現の可能性を否定していない。
MotoGPではすでに2027年からエンジン排気量を1000ccから850ccへ縮小するなど、大規模な技術規則変更が予定されている。そこに財務規則まで加われば、最高峰クラスの競争のあり方はさらに大きく変化することになる。
現状では予算上限の具体的な金額や導入時期、対象となる支出項目などは決まっていない。だが、MotoGP側が正式に検討していることをエスペレータが認めたことで、F1で定着したコストキャップという考え方が二輪最高峰カテゴリーにも導入される可能性が現実味を帯び始めている。
カテゴリー: F1 / MotoGP
