マルク・マルケス 通算7度目のMotoGP世界王座を獲得
マルク・マルケスは、ドゥカティのファクトリーマシンで迎えた初シーズンにして、残り5戦を残して通算7度目のMotoGP世界王座(グランプリ通算9度目の世界選手権)を獲得した。シーズン最初の周回から、この結果はほぼ必然のように見えていた。

だが、この偉業は彼がホンダで勝ち取った6つのタイトルと比べてどう位置づけられるのか。以下は、マルケスのMotoGPタイトルを「ワーストからベスト」まで順位付けしたものだ。

7位:2017年
マルク・マルケスがキャリアで2度経験した最終戦決着のうちのひとつ。しかし最終的なポイント差は37と十分なものだったとはいえ、このシーズンは彼の中で最も不安定なタイトルだったと言える。

序盤、マルケスとホンダは精彩を欠き、あまりの苦境にマルケスは髪を失っているとも言われた。マーベリック・ビニャーレスとヤマハが序盤のタイトル候補に名乗りを上げたが、ビニャーレスはやがてヤマハ時代を象徴する「好不調の波」に陥った。

代わって脅威となったのはアンドレア・ドヴィツィオーゾとドゥカティだった。もしシーズン前半のビニャーレスと後半のドヴィツィオーゾを組み合わせていたら……それでもマルケスが6ポイント上回る計算になるが、より一貫性のあるライバルがいれば敗北していた可能性があったのも事実だった。

それでも彼はグリッドで最も優れたライダーであり続けた。ただし、最高のマルケスではなかった。

6位:2018年
2017年仕様のRC213Vは失望を招きつつもタイトルを勝ち取ったが、翌年ホンダは改良版を投入。マルケスはそれを使い、早々にタイトル争いを支配した。

この年はマルケスにとって最も記憶に残らないタイトルのひとつだったが、同時に最も記憶に残るレースのひとつも含まれていた。アルゼンチンGPでの出来事だ。スタートグリッドで逆走し、ライドスルーペナルティを科されたにもかかわらず圧倒的な速さを見せつけ、アレイシ・エスパルガロやバレンティーノ・ロッシを強引に抜き去った。その結果、ロッシはレース後にメディアで猛烈な批判を展開することになった。

もしタイトル争いが続いていれば大きな火種となったかもしれないが、実際には何の争いも存在しなかった。

5位:2016年
前年はホンダとマルケスにとって惨事であり恥辱のシーズンだった。だがそれが彼を冷静にさせ、堅実な戦い方を身につけるきっかけとなった。そして結果的にファクトリーヤマハ勢に対して優位に立つことに成功した。

この年は新たにミシュランタイヤと統一ECUが導入された。マルケスはチームメイトのダニ・ペドロサを圧倒したが、シーズンを通じて最速だったかというとそうではなかった。ホルヘ・ロレンソの方がより多くの周回をリードし、トップ3周回数でも勝っていた。

だがロレンソは特にウェットでタイヤをうまく扱えず、マルケスのように安定して得点を積み上げられなかった。バレンティーノ・ロッシも堅実ではあったが、ムジェロでのエンジンブローが痛手となった。

最終的にモテギで3戦を残してタイトルを決めたが、その日はロッシもロレンソも自滅のクラッシュ。滑稽さと同時に、最も頼れるライダーとなったマルケスの姿を象徴していた。

4位:2025年
振り返れば実に単純だ。MotoGPで最高のライダーに最高のバイクを与えれば、9月には戴冠が決まる。

マルケスも完璧ではなかった。44戦を戦い、彼のような走りをすれば完璧はあり得ない。だがシーズン前テストから9月のモテギでのタイトル決定まで、一度も本格的なタイトル争いが成立することはなかった。

ドゥカティ・デスモセディチは依然としてグリッド最強のマシンだった。だが、その優位が揺らぎかけたタイミングで、マルケスは15連勝という驚異的な快挙を達成し、完全に支配した。

彼が単なるエリートライダーではなく、MotoGPの「究極のゲームチェンジャー」であることを改めて示した。

3位:2013年
ランキング上位では、どれも信じ難いほどの偉業ばかりで差をつけるのが難しい。

初年度で20歳にしてMotoGPタイトルを獲得した記録破りのシーズンは、モータースポーツ史に残る偉業だ。しかし2013年の中盤には、マルケスが最強のライバルに直面していなかったと感じさせる瞬間もあった。

彼が首位に立ったのは、主なライバルのペドロサとロレンソが負傷した時期だった。欠場は1戦のみだったが影響は大きく、この間にマルケスは4連勝を飾り、ロレンソに44点差をつけた。

最終的にその差をロレンソが4点まで縮めたことから、このタイトルはライバルの不運に助けられたとも言える。ルーキーイヤーにはクラッシュや接触も多く、代償がもっと大きければ結果は違ったかもしれなかった。

それでも、ロッシ、ロレンソ、ペドロサといった「エイリアン」世代の全盛期に、20歳の新人が9ポールを奪いチャンピオンに輝いた事実は、いかなる注釈をも打ち消す。

2位:2014年
プレシーズンのトレーニングで足を骨折し、大半のテストを欠いたにもかかわらず、マルケスは開幕から10連勝。2年目にして圧倒的な存在感を示した。

簡単な勝利もあれば、激戦を制した勝利もあった。ドイツではほとんどのライダーがピットレーンスタートとなる荒れたコンディションの中で勝利。どんな状況でも止められない存在だった。

だが連勝が止まって以降はやや不安定になり、結局18戦中15戦目でようやくタイトルを決定。勝つことが当然と見られる重圧が影響したとマルケス自身も認めていた。

それでも統計は圧倒的。13勝、13ポール。誰も2勝以上できなかったシーズンにおいて、この数字は他を圧倒していた。ただし、この年のホンダは最強マシンであり、後半の不安定さもあったため、頂点にはわずかに届かない。

1位:2019年
2014年をトップにしたい誘惑は強い。だが、2019年の一騎当千ぶりには勝てない。

表面的にはドゥカティのドヴィツィオーゾとのタイトル争いが成立するはずだったが、現実には何の戦いも存在しなかった。

カタール開幕戦でドヴィツィオーゾが0.023秒差で勝利した時点で、すでに悪い前兆があった。以降、マルケスはCOTAでの単独ミスを除けば常に1位か2位。シーズンを通して一度もトップ5圏外に沈まなかった。ホンダのコンストラクターズポイントのほぼ全てを稼ぎ、チームメイトに迎えた3度の王者ロレンソを全く寄せつけなかった。

別のライダーなら2014年のホンダでも、2025年のドゥカティでも勝てたかもしれない。しかし2019年のホンダで、あの151ポイント差を叩き出すのはマルケス以外にあり得なかった。

それが、この年を彼のキャリア最高のシーズンたらしめている。

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カテゴリー: F1 / MotoGP