マクラーレン「McL 6GT」発表 F1以来のMT復活でブルースの夢を現代に
マクラーレン・オートモーティブは、新たなスーパーカー・コンセプト「McL 6GT」を発表した。

創業者ブルース・マクラーレンが1960年代末に構想しながら実現できなかったロードカー「M6GT」の精神を現代に蘇らせたモデルで、V8内燃エンジン、後輪駆動、そしてマクラーレンF1以来となる本格的なマニュアルトランスミッションを組み合わせる。

McL 6GTは単なる過去の名車の復刻ではなく、マクラーレンが今後展開する新たな高級スーパーカーの方向性を示す存在でもある。油圧式ステアリングや機械式スイッチ、露出したエンジニアリングなど、電動化とデジタル化が進む現代とは対照的に「触覚」「アナログ」「機械的なつながり」を前面に押し出した。

ブルース・マクラーレンが果たせなかったM6GTの夢
McL 6GTの原点となったM6GTは、ブルース・マクラーレンがレーシングカーで培った技術をロードカーへ持ち込もうとしたプロジェクトだった。

ベースとなったのはCan-Amを戦ったM6Aで、ブルースはレースで成功を収める一方、マクラーレンの名を冠したロードカーを生み出す構想を抱いていた。しかし、1970年にブルースがM8Dのテスト中の事故で亡くなったことで、その計画が本格的な市販車事業へ発展することはなかった。

McL 6GTという名称も、マクラーレンのモータースポーツ活動とロードカーの原点を結びつけるものだ。ボディカラーはブルース自身のM6GTの赤をモチーフとし、現代の塗装技術による高いメタリック感と赤色顔料を組み合わせている。

燃料タンクを覆っていたM6GTの胴体パネルもデザイン要素として再解釈され、エンジンベイにはブルースのサイン、燃料フィラーキャップには「Speedy Kiwi」が刻まれるなど、細部にも創業者へのオマージュが盛り込まれた。

マクラーレン・オートモーティブのニック・コリンズCEOは、このクルマについて次のように説明する。

「McLaren McL 6GTは、私たちにインスピレーションを与え続ける創業者が完成させたいと願っていたものを大胆に想像したクルマです。そこにさらに60年分のイノベーションと情熱をあらゆる要素に織り込み、ドライバーとのつながりを体現する現代のアイコンを生み出しました」

マクラーレン・McL 6GT マニュアルトランスミッション

マクラーレンF1以来となる本格的なマニュアル
McL 6GTを特徴づける最大の要素がマニュアルトランスミッションだ。マクラーレンによれば、本格的なマニュアルトランスミッションを採用するのは、1990年代を代表するスーパーカーであるマクラーレンF1以来となる。

マクラーレンはV8内燃エンジンを搭載し、その駆動力をマニュアルトランスミッションを介して後輪へ伝えることを明らかにしている。Car and Driverによれば、公開されたプロトタイプのシフトパターンから6速MTとみられる。

さらに油圧式ステアリングを採用し、スイッチ類にも操作した感触を重視した設計を導入。アルミニウムから削り出されたローレット加工のコントロール類や、操作感とストロークを追求したシフトレバーなど、人間と機械の直接的なつながりが重視されている。

シフトレバーには立体的な「Speedy Kiwi」が組み込まれ、リンケージの一部も露出している。単に変速速度を追求するのではなく、ドライバー自身がギアを選び、機械を操作する行為そのものをMcL 6GTの価値として位置づけている。

M6GTを現代化した低くワイドなスタイリング
デザインもM6GTの単純な再現ではない。McL 6GTは極端に低くワイドなプロポーションを持ち、M6GTのベースとなったM6A Can-Amレーサーを思わせる低いノーズを採用する。

ボディ表面は近年のマクラーレンとは異なり比較的クリーンで、低いノーズから特徴的なカムバック形状のリアまで連続したボリュームで構成。ルーフからリアデッキ、エンジンカバーまでをひとつの流れとして見せることで、キャビンがボディの上に載るのではなく、その内部へ埋め込まれたようなシルエットを作り出している。

車体の中心には軽量なカーボンファイバー製モノコックを採用。その積層構造をあえて各部で見せることで、素材そのものもデザインの一部として扱った。

M6GTのテールライトから着想を得た「Racing loop」と呼ばれるモチーフは空力構造に組み込まれ、ブルースのM6GTが装着していたナンバープレートも同系色のグラフィックとして再解釈された。インテリアでは当時のボックス型キルティングを現代的に仕立て直し、デジタルメーターもオリジナルの視認性と雰囲気を意識したものとなっている。

マクラーレン・McL 6GT

2028年の市販化へ 500台限定で約150万ドルと報道
現段階で公開されたMcL 6GTは市販仕様そのものではなく、プリプロダクション・プロトタイプという位置づけだ。

Car and Driverは、市販モデルのデリバリー開始は2028年で、生産台数は500台、価格は約150万ドルになると報じている。エンジンの詳細なスペックについてマクラーレンはまだ公表していない。

McL 6GTが示しているのは、単なる懐古的なスーパーカーではない。マクラーレン自身も、このコンセプトが既存ラインアップとは異なる「新たに位置づけられた極めてエクスクルーシブなタイプ」のスーパーカーの基礎になるとしている。

速さや変速時間だけを追求すれば、現代のデュアルクラッチ式トランスミッションに優位性がある。それでもマクラーレンがV8、後輪駆動、油圧式ステアリング、そしてマニュアルトランスミッションを選んだことには明確な意味がある。ブルース・マクラーレンが目指したレーシングカーとロードカーの境界を越える思想を、60年以上を経た現代に「ドライバーと機械のつながり」という形で再構築したのがMcL 6GTである。



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カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム / 自動車ニュース