マクラーレンF1 2026年苦戦は前年王座の「重い代償」 それでも崩れなかった理由

2024年と2025年にコンストラクターズ選手権を連覇し、2025年にはランド・ノリスが自身初のドライバーズタイトルを獲得。
ダブルタイトルを手に2026年を迎えたマクラーレンだったが、新レギュレーション下ではメルセデスに先行を許し、MCL40はシーズン前半に期待された競争力を発揮できなかった。
しかし、大型アップデートを経て迎えたハンガリーGPではノリスが優勝。王者として迎えたシーズンで初勝利を挙げ、マクラーレンはようやくトップ争いへの本格的な復帰を果たした。
2025年タイトル争いを最後まで続けた「重い代償」
アンドレア・ステラは、2026年の出遅れには明確な理由があったと説明する。そのひとつが、2025年型マシンの開発をシーズン終盤まで継続したことだった。
2025年は序盤こそノリスとオスカー・ピアストリによるタイトル争いになるかに見えたが、レッドブルが開発を続けたことでマックス・フェルスタッペンが終盤にタイトル争いへ加わった。
マクラーレンも対抗する必要に迫られ、翌年に大規模なレギュレーション変更を控えながら、2025年型マシンへリソースを投入し続けた。
「2024年から2025年にかけて4つのタイトルのうち3つを獲得するまで、3年間着実に前進してきたが、今シーズンのスタートは本当の意味でリセットだった」とステラは振り返る。
「レギュレーション変更がおそらくこのスポーツの歴史でも最大級だったというだけではない。何より、2025年にダブルタイトルを確保するために注ぎ込んだ努力によって、どれほど重い代償を払っていたのかを思い知らされた」
2025年の成功を追求したことが、2026年型マシンの準備に影響したということだ。
それでもステラが強調するのは、そこでチームが崩れなかったことである。
「僕たちはバラバラになることもできた。前年のような形で選手権をスタートできなかったことについて、言い訳を探すこともできた。でも、そうはならなかった」
「技術的、戦略的な理由を理解しようとし、そこに努力を集中させた。それこそが、僕がこのチームを本当に誇りに思っている理由だ」
危機に直面しても「誰かを責めない」マクラーレン
ステラが語る「結束」は、近年のマクラーレンが進めてきた組織改革とも深く結びついている。
現在の姿は、ホンダとのパートナーシップを再開した2015年とは大きく異なる。当時のマクラーレンはコンストラクターズ選手権9位に低迷。翌2016年には6位まで浮上したものの、チーム内部では主導権争いが続いていた。
最終的にはロン・デニスがウォーキングでの37年間に及ぶ時代を終え、ザク・ブラウンが組織改革を推進。2018年には当時のチーム代表エリック・ブーリエも退任した。
さらに2022年末、アンドレアス・ザイドルの後任としてステラがチーム代表に就任すると、マクラーレンのマネジメントスタイルは大きく変化した。
チーム関係者のシンは、その最大の特徴を「責任追及をしない文化」だと説明している。
「一番大きいのは、アンドレアとザクによってリーダーシップが変わり、全員が自分の仕事をできるように力を与えられたことだと思う」
「ここには誰かを責めるということがない。それがどれほど大きなことなのか、外からでは分かりにくいかもしれない」
特にレース戦略のように、限られた情報と確率を基に短時間で判断しなければならない仕事では、失敗した際に責任を追及されるという恐怖が意思決定を鈍らせる可能性があるという。
「戦略のように、かなりストレスがかかり、確率に基づいていて、間違った方向へ行く可能性もある仕事をしていると、『もしミスをしたら周囲はどう思うだろう』と考えてしまうことがある」
「でも、ここにはそれがない。ただ常に改善することに集中する。悪い結果が出ても、それを心配することはない」

ミスも成功も同じように分析する
もちろん、失敗を無視するわけではない。重要なのは、誰が悪かったのかではなく、なぜその判断に至り、次にどう改善するかを検証することだ。
「悪い判断があれば、当然それを掘り下げ、理解し、改善しようとする。でも、本当に誰かを責めることはまったくない」
「ミスがあったレースから戻ってくることもある。良かったことも悪かったこともあるけれど、それらを同じように扱う。それは本当に力を与えてくれる環境だ」
この考え方は、ステラ自身が2026年の苦戦について語った内容とも一致する。
ステラは、この7カ月間で得た最大の教訓について「大きな困難に直面したときこそ、結束が力になる」と語った。
「何よりもまず自分たち自身に対して、立ち直り、トップへ向かう軌道に戻るためにチームの結束がどれほど重要なのかを証明できたと思う」
10年前の9位からF1王者へ
2015年にコンストラクターズ選手権9位だったマクラーレンは、その10年後にはF1世界王者としてシーズンを迎えるチームへと変貌した。
その過程にはマシンや施設への投資、技術部門の再編といった数多くの要素がある。しかし、チーム内部では特定の技術的ブレイクスルーだけではなく、ブラウンとステラが築いた組織文化そのものが復活の重要な要因だったと考えられている。
そして、その文化は成功しているとき以上に、2026年のような苦境で試されることになった。
2025年のダブルタイトルを守るために開発を続けた結果、翌年のスタートで「重い代償」を払った。それでも責任の押し付け合いに陥ることなく原因を分析し、MCL40を改善。ハンガリーGPでノリスを再び優勝へ導いた。
2026年のマクラーレンの復調は、単なるアップデートによる技術的な挽回だけではない。10年前の混乱から作り上げてきた「失敗しても誰かを責めない」という組織文化が、タイトル獲得後に訪れた最初の大きな試練で機能した結果ともいえそうだ。
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