FIA会長の「独立系F1エンジン」構想 フェラーリ代表「現実的か分からない」

バスールは「何でも可能だ」としながらも、独立系メーカーがF1エンジンそのものを製造することより、限られた予算のなかで既存メーカーと競争できる性能を実現することの方が大きな問題になると指摘。「本当に現実的なのかは分からない」と慎重な姿勢を示している。
FIAが検討するカスタマーチーム向け共通エンジン
ビン・スレイエムは先月、ロイターのインタビューでF1への給油復活を検討していることを明らかにした。そのなかで、さらに注目を集めたのが、FIAが選定するエンジンをカスタマーチームに供給するという構想だった。
ビン・スレイエムは、ワークスチームがエンジン供給を通じてカスタマーチームに政治的な影響力を行使する状況を防ぎたいとの考えを示している。
「Aチームが、エンジンを供給しているBチームを支配するようなことはなくなる」
「手頃な価格で実現できるのであれば、残りのBチーム向けにひとつのエンジンを用意する。そうすれば、誰かが『こちらに投票しなければ、いいエンジンを供給しない』などと言って影響力を行使することはできなくなる」
現行レギュレーションでは、パワーユニットメーカーはカスタマーチームに対し、ワークスチームが使用するものと同等仕様のパワーユニットを供給することが義務付けられている。
現在フェラーリは、自社のワークスチームに加えて、ハースとキャデラックにもパワーユニットを供給している。
また、ビン・スレイエムは将来的なF1パワーユニットについて、持続可能燃料を使用し、電動要素を限定したV8エンジンへの回帰も推進している。
バスール「何でも可能だが現実的かは分からない」
ビン・スレイエムの独立系エンジン構想について質問されたバスールは、技術的に不可能なアイデアではないと語った。
「何でも可能だ。誰かが今日エンジンを造りたいと思えば、造ることはできる」
一方で、問題になるのは単純にエンジンを完成させることではなく、その性能だという。
「問題はパフォーマンスだ。V8ならほかのものより簡単だと考えることもできる」
「ただ、それがものすごく現実的なのかどうかは分からない」
バスールは、独立系メーカーにとってF1エンジンを設計・製造する技術そのものが最大の障壁になるとは考えていない。むしろ、パワーユニットメーカーにも適用されているコストキャップが大きなハードルになるとの見方を示した。
現在のF1ではシャシー側だけでなく、パワーユニットメーカーの開発費についても上限が設定されている。また、内燃エンジン(ICE)のアップグレード機会については、FIAのADUOシステムによって決定される。

コスワースのような独立系メーカーでも「造ること自体は複雑ではない」
コスワースのような独立系エンジンメーカーにとって、このプロジェクトは複雑すぎるのではないかと問われると、バスールは技術的な製造能力と競争力を分けて考える必要があると説明した。
「エンジンを造ること自体は複雑ではない」
「複雑なのは、求められるパフォーマンスレベルだ」
「コストキャップのことを考えれば、この条件のなかで競争力を発揮するのは非常に難しいと思う」
つまりバスールが疑問視しているのは、独立系メーカーがF1エンジンを「造れるか」ではなく、限られた予算でフェラーリやメルセデスといった既存メーカーに匹敵する性能のエンジンを「造れるか」という点だ。
現在F1に参戦するパワーユニットメーカーは、フェラーリ、メルセデス、レッドブル・フォード、ホンダ、アウディの5社。FIAが構想する独立系サプライヤーが実現すれば、ワークスメーカーとの関係を持たない新たなエンジン供給ルートが生まれることになる。
ただしバスールの発言が示すように、その実現には技術的な参入障壁以上に、コストと競争力をどのように両立させるかという難題が残されている。
カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟) / スクーデリア・フェラーリ
