F1バーレーンGPの異常事態にドライバー苦言「V8自然吸気なら起きなかった」
2026年F1第16戦バーレーンGP in マレーシアで発生した異例のスタート混乱を受け、複数のF1ドライバーが2026年レギュレーションとパワーユニット(PU)の複雑さに苦言を呈した。カルロス・サインツJr.は「V8自然吸気なら起きなかった」と語り、F1は今回の事態を受けて自らを見直す必要があると訴えた。
セパンでは決勝前の豪雨によってスタートが40分延期。その後、コンディションが改善してフォーメーションラップが開始されたものの、複数のマシンが相次いでコース上で停止する異常事態となった。スタート手順はいったん中止され、最終的に当初予定から約1時間40分遅れてレースが始まった。
ラッセル「今日のF1はF1らしくなかった」
メルセデスのジョージ・ラッセルは、雨による延期からフォーメーションラップでのトラブル、セーフティカー先導まで続いた一連の流れについて、観客の立場から見ても満足できるものではなかったと指摘した。
「一日を通して少しグダグダした感じだった。延期があって、赤旗があって、その後はセーフティカーの後ろで延々と走って、さらに突然チェコ(セルジオ・ペレス)を前に行かせるために追加の周回をすることになった。今日はあまりF1らしくなかった」
「僕がスタンドで見ていたら、あの展開には少しがっかりしていたと思う。良くなかった」
ラッセルは、2026年から導入された新世代PUの複雑さにも言及した。
「パワーユニットはものすごく複雑だ。複雑にすればするほど、うまくいかなくなる可能性のあるものも増える」
「これは将来に向けて考慮しなければならないことだと思う」
ノリス「電子制御に頼りすぎるべきではない」
ランド・ノリスも今回の状況を「ひどかった」と表現。2026年F1のPUが内燃エンジンと電気エネルギーをほぼ均等に使う方向へ進んだことを念頭に、電子制御への依存度について疑問を呈した。
「こういうことを見ると、電子側にあれほど多くのものを持たせるべきではないということを証明していると思う」
キャデラックのセルジオ・ペレスも厳しい言葉を口にした。
「レンタルカートに乗っていて、時間切れになったみたいだった」
そして、一連の混乱について「このスポーツとして完全に受け入れられない」と批判した。
サインツJr.「5年前に誰がこの方向性を決めたのか」
特に踏み込んだ発言をしたのがカルロス・サインツJr.だった。サインツJr.は今回の問題を単なる偶発的なトラブルとしてではなく、2026年F1レギュレーションの複雑さそのものに関係する問題だと捉えている。
「F1は自分たち自身をしっかり見直して、どうしてこんな状況になったのかを確認する必要がある」
「レギュレーションがドライバーにとっても、チームにとっても、PUにとっても、メーカーにとっても極めて複雑なのは明らかだ。複雑すぎる」
サインツJr.はさらに、現在の技術規則へ向かうことを決定した時点まで遡って疑問を投げかけた。
「僕が聞きたいのは、5年前に誰がこの方向へ進むことを決めたのかということだけだ」
「僕たちはスポーツとして、そして与えられたレギュレーションのなかでベストを尽くしている。FIAもF1も、4~5年前に決められたものを使ってベストを尽くしている。でも、4~5年前に決められたことが間違っていたのは明らかだと思う」
「これ以上あまり言うことはない。スポーツとして今回のことから学んで、同じ間違いを繰り返さず、こういう奇妙なケースに再び苦しむことがないようにするだけだ」
そしてサインツJr.は、ソフトウェアや電子制御が増えた現代F1を象徴する出来事だったとの見方を示した。
「これだけ多くのソフトウェアや制御が関わっていれば、こういうことが起きる。もしV8自然吸気だったら、絶対に起きなかった」

フェルスタッペンも教訓を求める
レースを制したマックス・フェルスタッペンも、今回の異常事態からF1が教訓を得ることを望んでいると語った。
また、ルイス・ハミルトンは、F1マシンをフォーメーションラップ中に停止させ、その後再始動するという経験自体が初めてだったとして困惑を示した。
オスカー・ピアストリも同様だった。
「バグが原因でF1レースが遅れたなんて、今まで見たことがない。これは初めてだった」
ただしピアストリは、正式な説明が出る前に原因を決めつけるべきではないとも強調した。
「何が関係していたのかは分からない。ウエットコンディションだったのか、コードの変更だったのか、雷だったのかも分からない」
「雷の影響でF1やFIAの多くのシステムがダウンしたという話も聞いた。だから、何かがリセットされたようなことがあったのかもしれない」
「もちろん見た目として良くなかった。でも、説明が出る前に誰かを指さして責任を問うのはフェアではないと思う」
2026年F1はMGU-Hを廃止する一方、電気エネルギーの比重を大幅に高めた新世代PUを導入した。セパンで起きた異例の混乱は、その高度な電子制御とソフトウェアを含むシステムの複雑さを改めて浮き彫りにする形となった。
FIAは今回の集団パワー喪失について原因と対応を説明しているが、ドライバーから相次いだのは個別の不具合だけではなく、F1が進めてきた技術的な複雑化そのものへの疑問だった。サインツJr.の「V8自然吸気なら起きなかった」という言葉は、セパンでの異常事態を受けたドライバーたちの問題意識を象徴するものとなった。











