アストンマーティンF1スポンサーJCB 水素エンジン車で世界最速653km/h
アストンマーティンF1チームのスポンサーを務める英国の建設機械大手JCBが、水素を燃料とする車両の世界最高速度記録を樹立した。米ユタ州のボンネビル・ソルトフラッツで「Hydromax(ハイドロマックス)」が平均406.320mph(約653km/h)を記録した。

ステアリングを握ったのは、1997年にThrustSSCで世界初の音速突破を達成したアンディ・グリーン。JCBは建設機械で培ったエンジニアリング技術を水素内燃エンジンに応用し、従来の水素車による最高速度記録を大幅に更新した。

JCBが水素で406.320mphの世界記録
記録挑戦は米国ユタ州のボンネビル・ソルトフラッツで行われた。全長32フィート(約9.8メートル)のHydromaxは、FIAが定める方式に従って2回の計測走行を実施した。

1回目は400.623mph(約645km/h)、2回目は412.135mph(約663km/h)を記録。その平均となる406.320mph(約653km/h)が公式記録となった。

Hydromaxを駆動するのは、量産技術をベースとした4.8リッターの水素内燃エンジン2基。合計出力は約1,600bhpに達する。

JCBといえばショベルやホイールローダーなどの建設機械で世界的に知られるメーカーだが、今回のプロジェクトでは「重いものを動かす」ために培ってきた技術を、純粋な最高速度の追求へと転用した。

世界最速の男アンディ・グリーンがドライブ
Hydromaxのドライバーを務めたアンディ・グリーンは、ランドスピードレコードの世界では特別な存在だ。

グリーンは1997年、ThrustSSCを駆って763.035mph(約1,228km/h)を記録。地上を走る車両として史上初めて音速を突破し、現在も世界絶対速度記録の保持者である。

今回、そのグリーンが水素エンジン車による新たな歴史を作った。

「マシンは素晴らしかった。安定していて、強く、そして速かった」

グリーンは走行後にそう振り返った。

「Dieselmaxから20年後、水素で世界記録を樹立できたことを光栄に思います」

JCBは2006年にも、ディーゼルエンジンを搭載した「Dieselmax」で速度記録に挑戦している。今回のHydromaxは、その精神を水素という次世代燃料へ受け継いだプロジェクトでもある。

実際にはさらに速く走れた
驚くべきことに、406.320mphという数字はHydromaxの性能を完全に使い切った結果ではなかったという。

グリーンによれば、車両には設定された速度上限があり、計測区間では意図的にアクセルを戻さなければならなかった。

「実際、マシンがあまりにも良かったので、設定していた最高速度に達してしまい、計測マイルを走っている途中でアクセルを戻して減速しなければならなかったんです」

つまり、技術的には今回の公式記録をさらに上回る速度に到達できる余力があったことになる。

従来の水素エンジン車記録を2倍以上に更新
今回の記録が持つ意味は、単に400mphの壁を突破したことだけではない。

従来、水素を燃料とする内燃エンジン車の最高速度記録は185.5mph(約299km/h)だった。Hydromaxの406.320mphは、それを2倍以上に引き上げたことになる。

さらに、水素燃料電池車による303mph(約488km/h)の記録も上回った。これによりHydromaxは、動力方式を問わず水素をエネルギー源とする車両として世界最速となった。

アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

JCBが水素内燃エンジンにこだわる理由
今回の挑戦は、単なる最高速度記録のためのプロジェクトではない。

JCBは建設機械の脱炭素化に向け、水素内燃エンジンの開発を進めている。大型建設機械では長時間稼働や短時間での燃料補給、高い出力などが求められるため、バッテリーだけでは用途によって実用上の制約が生じる。

そこでJCBが有力な選択肢として開発しているのが、従来の内燃エンジン技術を生かしながら水素を燃焼させる方式だ。

JCB会長のアンソニー・バンフォード卿は、今回の記録について次のように語った。

「これは水素が機能すること、そして最高レベルで今日すでに機能することを示している。しかも排出ガスはゼロだ」

Hydromaxは、極端な最高速度という環境で水素内燃エンジンの性能を示すことで、JCBが進める水素技術そのものを世界にアピールする役割も担っている。

アストンマーティンF1を支えるJCB
JCBはモータースポーツとも深い関係を持ち、現在はアストンマーティンF1チームのスポンサーを務めている。

F1では2026年から持続可能燃料の使用が義務化されるなど、モータースポーツを通じた次世代エネルギー技術の開発が重要なテーマとなっている。JCBが選んだアプローチは水素内燃エンジンであり、今回の世界記録はその技術的な可能性を極端な形で実証するものとなった。

建設現場で巨大な重量物を動かしてきたJCBが、今度は約653km/hという速度領域に挑んだ。Dieselmaxから20年を経て実現したHydromaxの世界記録は、同社にとって水素内燃エンジン開発を象徴する新たなマイルストーンとなった。

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カテゴリー: F1 / アストンマーティンF1チーム / F1スポンサー