ヤマハ MotoGP 日本GP
Movistar Yamaha MotoGPのホルヘ・ロレンソとバレンティーノ・ロッシのトップ争いから始まった日本GP。ところがふたりがともにリタイアする波瀾の展開となった。

ホルヘ・ロレンソはグリッド3番手から好スタートを切り、バレンティーノ・ロッシを抜いて2番手で第1コーナーへ。続けて第2コーナーではマルク・マルケス(ホンダ)をとらえトップに浮上した。

バレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスがバトルを展開する間に、ホルヘ・ロレンソはアドバンテージを0.6秒まで拡大。しかし後続の2台もレースをあきらめたわけではなく、再び近づくと、3ラップ目にはマルケスがロレンソをとらえてトップに浮上する。2番手に後退したロレンソは、マルケスにぴったりとついて行き、その後方にはロッシが迫る。そして6ラップ目にはロッシがロレンソをパスして2番手に上がったが、その直後に転倒して戦列を離脱した。

この間にトップを行くマルク・マルケスが着々とリードを広げていたため、ホルヘ・ロレンソは後方から追い上げてくるアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)との距離を意識し、2位確保を目指した。ところが残り5ラップとなったところで転倒、そのままリタイアとなった。

バレンティーノ・ロッシはポールポジションからスタート後、マルク・マルケスとホルヘ・ロレンソに先行を許してしまう。その後はマルケスとアレイシ・エスパルガロ(スズキ)に挟まれ激しいバトルとなり、オープニングラップを終了した時点で3番手。しかしここから再び追い上げを開始し、5ラップ目にはロレンソをパス。さらにトップを目指してペースを上げていったが、7ラップ目の第10コーナーで転倒した。

バレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソは、それぞれ196ポイントと182ポイントでランキング2位と3位をキープ。コンストラクターズ・ランキングではヤマハが合計288ポイントとなり、トップから28ポイント差のランキング2位。チーム・ランキングでは、Movistar Yamaha MotoGPが合計378ポイントでランキング2位につけている。

中須賀克行が11位を獲得
予選で1分46秒627を記録して16番手スタートとなったYAMALUBE YAMAHA FACTORY RACINGの中須賀克行。そして前日のスタート練習で「かなり手応えがある」と中須賀が語っていたとおり、抜群のスタートを決める。直後の第2コーナー近辺での大渋滞には一歩引く形でクリアすると、オープニングラップを15番手で戻ってくる。その後、ユージン・ラバティ(ドゥカティ)、ジャック・ミラー(ホンダ)、ホルヘ・ロレンソが転倒。こうしたことも手伝い9周目には12番手に浮上した。レース中盤に中須賀は1分47秒台をキープして走行。レース終盤では1分48秒台に落ちたが、単独走行ながらコンスタントに走り続け、最終的には11位という結果で日本GPを終えた。

エスパルガロがヤマハ勢トップ。スミスもポイントゲットの大健闘
Monster Yamaha Tech 3のポル・エスパルガロは、同チームで50回目のMotoGPに出場して6位獲得と健闘した。グリッド3列目から好スタートを切り、ストップ&ゴーのコースを順調に駆け抜けながら1周目で1台をパス。ここからさらにリズムよく走行を続け、前方のC・クラッチロー(ホンダ)を追って行った。コンスタントなペースで後続を引き離したエスパルガロは、レース中盤で7番手に浮上すると、終盤でもうひとつ順位を上げて6位でチェッカーを受けた。

ブラッドリー・スミスは、8月以来のMotoGP出場。右膝の怪我の影響で万全の状態ではなかったが、果敢にもレースを走り切って13位を獲得した。グリッド5列目からスタート後、オープニングラップの混戦のなかで18番手へ後退。しかしすぐにリズムをつかむと、集中力をキープして着実に順位を挽回していった。そしてレース中盤で14番手まで上がり、最終的には13位でゴール。体調を考えれば、予想をはるかに超える好成績となった。

Movistar Yamaha MotoGP
ホルヘ・ロレンソ (リタイア)
「ミスをしてしまい本当に悔しい。タイヤが消耗していた状況で激しくプッシュしすぎてしまった。アラゴンではタイヤ選択が功を奏したが、今回はその逆になってしまった。フロントタイヤのチョイスを間違えたんだ。別のコンパウンドを選んでいれば、もっといい戦いができたのだろうが、残念ながら好感触をつかめないままマルケスから離された。そして最後はドビツィオーゾに追い上げられ、いつも以上にプッシュして僕は転倒してしまった。優勝争いができたはずなので、悔しい気持ちでいっぱい。そして同時に、ランキング2位獲得のチャンスも失ってしまった。マルケスがチャンピオンになったのは、最も安定していたことが理由だと思う。心から祝福するよ」

バレンティーノ・ロッシ (リタイア)
「幸い体はまったく問題ない。でもこの結末は本当に残念だ。予選からは絶好調で、今日もパワーもペースも最高だったんだ。スタートはちょっと出遅れてしまい、マルケスとロレンソに先を行かれてしまった。その後はマルケスのほうが僕よりやや速かったので、先にロレンソをパス。そしてマルケスをとらえようと激しくプッシュしたらフロントが切れ込んだ。コーナー進入でワイドに行き過ぎたとか、深く行き過ぎたとか、そういう感覚はまったくなかった。それでも転倒してしまったのだから、僕がミスをしたということなんだ...」

マッシモ・メレガリ (チーム・ディレクター)
「好成績を期待していただけに残念な結果だ。ホルヘは昨日の転倒があったし、バレンティーノも風邪をひいていて、いずれも体調は万全ではなかったが、決勝ではとても素晴らしい走りを見せてくれた。そしてトップ争いを展開し、マルケスを逃すまいと懸命に攻め続けた。ふたりが転倒してしまったことは本当に残念。マルケスには祝福を贈る」

YAMALUBE YAMAHA FACTORY RACING
中須賀克行 (11位)
「まず、自分のことよりも、ロッシとロレンソが転倒し、タイトルがライバルメーカーにわたってしまったことが、ヤマハのライダーとして、YZR-M1の開発ライダーとして悔しいですし、来年のタイトル奪還に向けて改めて気持ちを引き締めています。このウイークを通して、YZR-M1をどのように自分に合わせていくか、そしてミシュランタイヤに自分をどのように合わせていくかを考えて走りました。今日のウォームアップではセッティンがうまくまとまらなかったのですが、その後にECUを調整したら、いい方向にいきました。ただ、これは自分の未熟な部分ですが、タイヤの空転を防げる時と、それができないときがあり、この辺がMotoGPライダーとの差だと思います。もちろんこれも含め、ライダーとしてもっと自分を高めていきたいと思います。レースではヤマハファン、MotoGPファンの前でプッシュし続ける走りができました。応援していただいたファンの皆さんには感謝しています。次のレースは、全日本最終戦のMFJ-GPです。ここではチャンピオンがかかっていますが、いつも通りに準備を進め、優勝、そしてチャンピオン獲得を目指してがんばりますので、こちらも応援してください」

尾方宏彰 (チーム監督談)
「今回は、エンジンなどのハード面ではなく、例えばECUなどの細かい部分での開発作業が主となりました。いつものテストだと、パーツ類のテストはもちろんですが、常にMotoGPチームを基準とし、中須賀選手用にYZR-M1をセットアップすることはほとんどありません。しかし今回は、開発テストを含めながらではありますが、中須賀選手用にYZR-M1をセットアップし、レーシングライダー中須賀選手が望むYZR-M1はどのようなものか、中須賀選手自身が速く走るには何が必要かを知ることができ、とても新鮮であると同時に得るものもたくさんありました。こうした開発を兼ねての参戦なので、結果を求めるものではありませんが、決勝レースでのスタートは抜群で、データ的にはロッシを上回るものでした。これは、間違いなく今後に生かされますし、レースでないと得られない情報でもあります。一方、開発陣としては、全日本ロードレースで5連覇がかかっている中須賀選手が、この日本グランプリを無事に終えることができてホッとしています。最後に、チームと中須賀選手を応援してくださったファンの皆さんに感謝いたします。ありがとうございました」

Monster Yamaha Tech 3
ポル・エスパルガロ (6位)
「タフな戦いだったよ。そのなかで10ポイントを獲得できたことはとても重要だ。でも走り自体は、本来の力を十分に発揮することができず残念に思っている。プラクティスのどのセッションも、あまり気持ちよく走ることができなかったので、厳しいレースになることははじめからわかっていたけどね。スタートはとてもうまくいって、ドゥカティ勢の前に出ることができた。このことが、今日の順位につながるポイントだったと思うんだ。でも上位グループについて行くことはできなかったので、ほとんどの時間帯をひとりで走っていた。そのうちに上位に転倒があり、僕は6位に上がることができたというわけだ。とにかくポイント獲得はうれしいこと。これからは次のオーストラリアに照準を合わせていく。フィリップ・アイランドはとてもエンジョイできるコースで、良い思い出がたくさんあるんだ」

ブラッドリー・スミス (13位)
「非常にハードな1日だった。でも努力が報われて、ポイントを獲得できたんだ。この7週間、僕はみんながレースをしているのをただ見ていた。今日はグリッドに並び、自分のいるべき場所でやるべきことができて本当にうれしかったよ。レースを完走できるかさえ分からない状態だったことを考えれば、13位という順位に不満なんかない。実を言うと、レースの長さを忘れてしまっていたんだ。全力で24ラップを走ることがどれだけ大変なことか、しかもそれをミスなしでやりきらなければならないのだから、今の僕には本当に難しいチャレンジだった。チームのみんなには感謝の気持ちでいっぱい。彼らは毎日、懸命に仕事に取り組み、僕のために素晴らしいマシンを用意してくれた。僕はリハビリを受けなければならず、彼らといる時間はいつもより少なかったけれど、僕自身のこともよくケアしてくれたんだ。またそれ以上に、日本滞在中ずっと、いろいろな面で支えてくれたヤマハにも本当に感謝している。今の僕にはどうしても手助けが必要だったからね。彼らはその状況を理解し、とてもよくサポートしてくれたんだ。心から感謝している」

エルベ・ポンシャラル (チーム・マネジャー)
「ファクトリーが2台ともチェッカーを受けられず、マルケスがここでチャンピオンを決めるなんて誰が想像しただろうか。我がチームは、まずポルの健闘を讃えたい。ウイークを通じてベストを尽くし、決勝では6位という好成績を獲得。しかもヤマハ勢トップに立ったのだ。カルには大差をつけられていたので、後続との距離をしっかりコントロールし、チェッカーを受けた。カルとの差はわずか10ポイントだから、残り3戦で何が起きるかわからない。一方のブラッドリーは、本当に素晴らしい仕事を成し遂げた。木曜日にここに到着した時点では、1ラップさえできるかどうかわからないような状態だった。にもかかわらず、すべてのセッションを走り切り、しかも予選15番手を獲得。それだけでも見事だった。そして我々はその時点でもまだ、レースを走り切るのは難しいだろうと考えていた。ところが彼はそれをやりきり、しかも、体調に問題のないライバルよりも前でフィニッシュした。だから彼には感謝の気持ちでいっぱい。次のオーストラリアまでに、彼の膝がもっと良くなってくれることを祈っている。チームのみんなにも感謝。次回に期待している」

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カテゴリー: F1 / MotoGP